森林小集水域における渓流水質に及ぼす諸要因の影響

概要

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渓流水質にどのような要因が影響しているかを、30余りの森林小集水域を対象に、溶存物質濃度をもとに検討した。調査地は群馬県の渡良瀬川上流に位置する、東京農工大学演習林内の小集水域である。小集水域間の渓流水質の違いは、とくにCa^<2+>、N0_3^-およびHC0_3^-で顕著で、Ca^<2+<で0.05〜0.30mel^<-1>、N0_3^-で0.01〜0.26mel^<-1>、HC0_3^-で0.001〜0.32mel^<-1>の濃度であった。一方、小集水域間のK^+とCl^-の濃度の違いは比較的小さく、K^+で0.02mel^<-1>前後、Cl^-で0.05mel^<-1>前後であった。施肥前歴が多くの溶存物質の濃度に影響し、硝化作用とそれにともなうイオン交換や鉱物の破壊の促進があることが示唆された。Ca^<2+>とSiO_2は、施肥前歴以外に採水点の標高の影響を受け、標高が高いほど濃度は低かった。N0_3^-濃度は施肥前歴の影響がとくに大きかったが、施肥前歴のない小集水域では、林齢が比較的大きく影響していた。各小集水域の、渓流水のN0_3^-/Cl^-比と表層から50cm以深の土壌の水溶性のN0_3^-/Cl^-比との間には正の相関関係があり、渓流水のN0_3^-には根系外へのN0_3^-、の流亡の程度が影響していることが示唆された。
日本森林学会の論文
1994-09-01