胎盤Alkaline Phosphatase Isoenzymeの妊娠経過に伴う推移
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概要
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各種の胎盤性蛋白が,妊娠時期により特徴的た消長パターンを示すことは,現在よく知られた事実である.Alkalinephosphatase(ALP)は胎盤性蛋白のなかの代表的酵素の1つであり,従来胎盤性ALPとしては耐熱性isoenzymeのみが注目されてきた.しかし,ALPにはこの他に2種類のisoenzymeが存在するので,本研究では,妊娠の推移に伴うALPisoenzymeの量的,質的変化を生化学的,酵素および免疫組織化学的に検討し,次の結果をえた.1.ALP総活性は妊娠初期から絨毛のsyncytium細胞で産生され,妊娠週数が進むにつれALP産生Syncytium細胞数が増し,それに伴い活性値(IU/g)も上昇し妊娠末期に最高値となる.2.妊娠早期では熱感受性,L phenylalaine弱感受性,L homoarginine強感受性の組織非特異型ALPisoenzymeが総活性の大部分を占め,血中hCGが最高値を示す妊娠10週前後に組織非特異型ALPisoenzymeも最高値を示す.3.妊娠中期以後では耐熱性,L phenylalanine強感受性,L homoarginine弱感受性の後期胎盤型ALPisoenzymeが総活性の大部分を占める.しかし,同isoenzymeは妊娠早期でもごく一部のSyncytium細胞で産生されていることが確認された.4.妊娠早期における組織非特異型ALP isoenzymeおよび妊娠中期以後における後期胎盤型ALP isoenzymeが,蛋白として存在することが免疫組織化学的手技を用いることにより裏付けられた.以上より,胎盤には少なくとも2つのALP isoenzymeの遺伝子が存在し,妊娠に伴う絨毛の細胞環境の変化により,遺伝子のswitchon,offがregulateされていると考えることが可能であり,また組織非特異型ALP isoenzymeがhCGと同様な消長パターンを示すことより,developmental phase specific gene setの存在の可能性が示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1984-08-01
著者
-
野沢 志朗
慶応義塾大学医学部婦人科学教室
-
太田 博明
慶応義塾大学医学部婦人科学教室
-
鈴木 健治
けいゆう病院
-
栗原 操寿
慶応義塾大学婦人科
-
鄭 成輝
慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
-
新井 宏治
慶応義塾大学 産婦人科
-
田村 昭蔵
慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
-
田村 昭蔵
田村クリニック
-
鈴木 健治
慶応義塾大学医学部産科婦人科学教室
-
板倉 甫能
慶応義塾大学医学部産科婦人科学教室
-
野沢 志朗
慶応義塾大学
-
田村 昭蔵
慶応義塾大学
-
栗原 操寿
慶応義塾大学 産婦人科
-
板倉 甫能
慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
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