抗フェリチンモノクローナル抗体の作成と酵素免疫測定系の確立

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ヒト正常満期産胎盤より精製したフェリチンにより免疫したマウスの脾細胞とマウスミ***ーマ細胞とを細胞融合させ,抗ヒト胎盤フェリチンモノクロナール抗体産生ハイブリドーマ10株を樹立した.ハイブリドーマ細胞より産生されるモノクロナール抗体10種類にhorseradish peroxidaseを標識後,ヒト胎盤フェリチンの測定に最適の抗体の組み合わせをEIA(酵素免疫測定法)にて選択し,これら2種のモノクロナール抗体を不溶化抗体及び標識抗体,ヒト胎盤フェリチンを標準物質としてサンドイッチEIA系を確立した.本測定系の測定範囲,同時再現性,感度はそれぞれ0〜500ng/ml,C.V.5.44〜6.15%,10ng/mlであつた.また,この測定系を用いて得られた,正常成人血清,正常妊婦血清,婦人科悪性腫瘍患者血清中のフェリチン値に関しては,正常成人群の平均値は84.5ng/mlで,この値から求めた正常上限M+2S.D.は137.7ng/mlであつた.正常妊婦血清フェリチン値の妊娠週数による変化は3〜5カ月頃ピークを認め,以後減少傾向を示した.悪性腫瘍患者血清では,正常上限を超えて高値を示す例が多く,フェリチンが腫瘍マーカーとして有用であることが裏付けられた.この測定結果を従来のヒト肝フェリチンを標準物質としたポリクロナール抗体EIA系と比較すると,各群におけるフェリチン値の相関は,正常群r=0.9486,妊婦群r=0.9776,悪性腫瘍群r=0.9040と良好で,今回のモノクロナール抗体EIA系が感度の点で従来のポリクロナール抗体EIA系に劣らぬことが判明した.さらに,各群における相関直線の傾きの比較より,従来の塩基性フェリチンを標準物質とした測定系でしばしば問題となる悪性腫瘍由来フェリチン測定における偽陰性を,今回のような酸性フェリチンを標準物質とした測定系により補正できる可能性が示唆され,モノクロナール抗体を用いた本EIA測定系の有用性が示された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1985-12-01

抗フェリチンモノクローナル抗体の作成と酵素免疫測定系の確立

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