Histocompatibility antigen にたいする抗体の精子運動性におよぼす影響について
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概要
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マウスの精子表面には微量ではあるが, histocompatibility antigen の存在する事が確認されている. 一方ヒトでは妊婦又は経産婦の1/3〜1/4に夫の histocompatibility antigen にたいする抗体の存在する事が報告されている. それでは精子は, この histocompatibility antigen にたいする抗体によつて, その運動性が障害されるだろうかと言う疑問が生じる. 著者らはこの問題について検討を加える事を試みたが, そのためには解決せねばならない問題が2つあつた. 第1はできるだけ強力な抗体を得る事であり, 第2は補体中に存在するマウスの種特異抗原にたいする自然抗体を除く事であつた. 第一の点については仮りに histocompatibility antigen にたいする抗体が精子の運動性に障害を与えなかつたとしても, それは「抗体が弱いためであり, より強力な抗体を使用したならば, 精子の運動性は障害されるかも知れない」と言う懸念が生じる. そのためできるだけ強力な抗体を必要とした. そこで C3H/He マウス origen の悪性腫瘍 myeloma には腫瘍特異抗原のほかに, C3H/He マウスの histocompatibility antigen を大量に含んでいる事に目をつけ, これを系の異なる C57BL/6J マウスに移植して C3H/He マウスの histocompatibility antigen にたいする非常に強力な抗体を得た. 第2の問題はモルモット, 家兎, ヒトなどの新鮮血清を補体として用いる時, いずれの血清にもマウスの種特異抗原にたいするつよい自然抗体が存在していた. つまりこれらの血清はマウスの種特異抗原にたいする自然抗体と補体活性の両方を有するため, マウスの精子とこれらの新鮮血清を混合すると精子の運動性は瞬時にして失なわれた. そのため補体活性を損なわずに自然抗体のみを吸収する事を必要とした. そこでヒト新鮮血清に pack したマウスの spleen cell を0℃のもとで作用させた. 反応時間は最初1分より始め, 順次 3分, 10分, 60分と徐々に長くする事により補体活性を温存しつつ自然抗体のみを吸収した. 以上2つの問題を解決-した後, C3H/He マウスの histocompatibility antigen にたいする抗体がC3H/Heマウスの精子の運動性にどのような影響をおよぼすか検討した. その結果非常に強力な抗体を使用したにもかかわらず精子の運動性にたいしほとんど影響をおよぼさない事を知つた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1973-01-01
著者
-
都竹 理
大阪大学医学部産科婦人科学教室
-
中室 嘉郎
大阪大学医学部産科婦人科学教室
-
小川 誠
大阪大学医学部産科婦人科学教室
-
若尾 豊一
大阪大学医学部産科婦人科学教室
-
根来 孝夫
大阪大学医学部産科婦人科学教室
-
小川 誠
大阪大
-
佐治 文隆
大阪大学医学部産科婦人科学教室
-
中室 嘉郎
大阪府立病院
-
佐治 文隆
大阪大学医学部産婦人科学教室
-
根来 孝夫
大阪大学医学部産婦人科学教室
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