正常妊娠と絨毛性疾患におけるc-myc, c-fms, c-sis癌遺伝子の発現に関する研究

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妊娠初期, 中期および後期の正常絨毛と絨毛性疾患 (胞状奇胎, 絨毛癌) の新鮮手術材料における, c-myc, c-fms, c-sis癌遺伝子の発現状況をNorthern blottingとビオチン-アビジン法によるIn situ hybridizationによって明らかにし, 正常絨毛の増殖発育分化機構と絨毛の癌化機構との関連性について検討し以下の結果を得た。1) c-myc mRNAは正常絨毛において6週から7週にかけて最も強く発現し, 以後急激に低下し満期産に至り, その組織局在性はcytotrophoblastの細胞質のみに認められた。胞状奇胎と絨毛癌でもc-myc mRNAは6週から7週の正常絨毛と同程度に発現しており, 組織局在性は胞状奇胎では, 増殖傾向の強い部分のCタイプおよびSタイプ両者のtrophoblastの細胞質に示され, また絨毛癌では絨毛癌を構成するすべての癌細胞の細胞質に認められた。2) c-fms mRNAは初期絨毛ではほとんどみられず, 20週近辺で急激に上昇しやや下降しながら満期産に至る傾向を示した。その組織局在性は分化傾向の強いsyncytiotrophoblastの細胞質に認められた。胞状奇胎と絨毛癌でもc-fms mRNAは正常絨毛と同程度に発現しており, 組織局在性は, 胞状奇胎では増殖傾向の強い部分のSタイプのtrophoblastの細胞質に示され, また絨毛癌でもSタイプの癌細胞の細胞質に認められた。3) c-sis mRNAは, 正常絨毛において6週から7週にかけて最も強く発現し, それ以後, 急激に低下し満期産に至る傾向が認められた。その組織局在性はcytotrophoblastの細胞質にのみ示された。また, 胞状奇胎や絨毛癌では発現は認められなかった。以上の結果より, c-myc, c-sis, 癌遺伝子は正常絨毛の増殖発育を制御し, c-fms癌遺伝子は主に絨毛の分化に関与していることが明らかとなった。なかでもc-myc, c-fms癌遺伝子は絨毛の癌化機構や胞状奇胎の発生機序とも深く関与するものと思われた。
1988-12-01

正常妊娠と絨毛性疾患におけるc-myc, c-fms, c-sis癌遺伝子の発現に関する研究

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