超音波パルスドップラー法による妊婦骨盤内静脈血流動態に関する研究
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概要
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超音波パルスドップラー法を用いて, 妊娠, 産褥における骨盤内静脈血流動態を解析した. まず, 超音波パルスドップラー法が骨盤内血流速度の測定に適用しうるか否かを検討し, 次に, 非妊婦25例, 妊婦123例, 褥婦45例を対象に, 安静時, 仰臥位での外腸骨静脈血流速度を測定した. 1.血流ファントムによるシミュレーション実験から, 超音波ビームの入射角が50°を超えると, 測定値と理論値の誤差が大きくなった. したがって, 血流速度の測定条件として, 入射角は50°以下とした. 2.測定値の精度を検討したところ, 妊婦10例の症例ごとの測定値の変動係数は4.4%から9.8%(平均7.8%)であった. 3.外腸骨静脈血流速度は, 非妊時で21.4±7.7cm/sec, 1st trimesterで20.8±9.5cm/secであり, 両者間に有意差はなく, 2nd trimesterでは8.8±5.6cm/secと減少し(p<0.001), 3rd trimesterで6.1±3.3cm/secとさらに減少した(p<0.01). 産褥24時間では12.7±4.3cm/secと, 3rd trimesterに比べて増加したが(p<0.001), 非妊時と比べると, 低値であった(p<0.001). 産祷4週では19.3±5.3cm/secとなり, 非妊時との有意差は認めなかった. 以上の成績より, 1.シミュレーション実験から得られた条件下での, 超音波パルスドップラー法による外腸骨静脈血流速度の測定値の再現性は良好で, 臨床検査として耐えうるものと考えられた. 2.今回対象とした非妊婦・妊婦・褥婦193例の全例において, 外腸骨静脈血流速度を測定することができ, 血流速度は, 2ndから3rd trimesterにおいて著しく低下し, 産褥4週を経て非妊時のレベルに復帰することが明らかになった.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1996-04-01
著者
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泉 陸一
富山医科薬科大学産科婦人科
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泉 陸一
富山医科薬科大学医学部産科婦人科学教室
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酒井 正利
富山医科薬科大学産科婦人科学教室
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酒井 正利
富山大学周産母子センター
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泉 陸一
富山医科薬科大学 産婦人科
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新居 隆
富山医科薬科大学医学部産婦人科学教室
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新居 隆
黒部市民病院産婦人科
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酒井 正利
富山医科薬科大学産科婦人科
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