悪性胚細胞腫瘍に用いられる抗癌剤の卵巣毒性に関する研究
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概要
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卵巣悪性胚細胞腫瘍の癌化学療法に用いられている多剤併用療法を構成している各種抗癌剤の単剤ならびに多剤併用時の卵巣障害に関する基礎的検討を行った. 原始卵胞に対する毒性については, 10週齢マウスの抗癌剤投与前に摘出した一側卵巣と投与後に摘出した他側卵巣について算出した原始卵胞数の遺残率を検討した. 単剤では, 1/5LD_<50>の1回投与を行ったところ, peplomycin (PLM), cyclophosphamide (CPM), cisplatin (CDDP)で有意な低下を, actinomycin D (ACD)で低下傾向を認め, vincristine (VCR), vinblastine (VLB), etoposide (VP-16)では有意な差を認めなかった. 多剤併用では, 臨床常用量を体重当たりに換算して投与した. 6回投与では, PVP療法, PEP療法はVAC療法に比較し有意に原始卵胞の遺残率が高かった. 顆粒膜細胞に対する毒性については, 過排卵刺激した3週齢ラットより顆粒膜細胞を採取し, MTT assayを用いて検討した. 単剤で障害性が明らかになったのは, VP-16, CPM, ACD, CDDPであり, VLB, VCR, bleomycin (BLM), PLMは明らかでなかった. 多剤併用では, PVB療法は, PEP療法, VAC療法に比較し有意に障害性が弱かった. 抗癌剤投与後の排卵能力については, 10週齢マウスを用いて, PLM1/5LD_<50>投与後10週, 20週の時点で過排卵刺激による排卵卵子数を求め検討した. 排卵卵子数は, 10週後, 20週後でともに対照とした生食群の約20%に減少した. 以上より, 若年女性の卵巣悪性胚細胞腫瘍に対して, 癌化学療法を行う場合のregimenの選択は, 妊孕性温存の点からは, VAC療法に比較し, PVP(B)療法又はPEP療法の方が望ましいことが示唆された. しかし, この場合PEP療法は顆粒膜細胞に対する障害が強いことに留意する必要があると思われた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1997-06-01
著者
-
泉 陸一
富山医科薬科大学産科婦人科
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泉 陸一
富山医科薬科大学医学部産科婦人科学教室
-
泉 陸一
富山医科薬科大学産科婦人科学教室
-
泉 陸一
富山医科薬科大学 産婦人科
-
伏木 弘
富山医薬大
-
伏木 弘
富山医科薬科大学産科婦人科学教室
-
脇 博樹
富山医科薬科大学医学部産科婦人科学教室
-
伏木 弘
市立砺波総合病院
-
伏木 弘
富山医科薬科大学医学部産科婦人科学教室
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