同一ヒト子宮頚部腺癌病巣より樹立した2種の細胞株の細胞生物学的特性, 各種抗癌剤に対する感受性ならびに増殖能に及ぼすホルモンの影響について
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概要
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子宮頚部腺癌に対する有効な抗癌化学療法のregimenの開発と根治手術後患者へのホルモン補充療法の可否を明らかにすることを目的として, 著者は新たに同一ヒト子宮頚部腺癌病巣より性格の異なる2種の培養細胞株を樹立し, それらを用いて各種抗癌剤感受性ならびにホルモンの細胞増殖能への影響について検討した。材料, 子宮頚部腺癌Ib期の手術摘出腫瘍をヌードマウスに継代移植した腫瘍より採取されたものである。継代培養が可能となった株, 倍加時間が48時間と93時間の2株であり, 細胞形態, 染色体分析, 腫瘍マーカー産生能を異にし, それぞれTCO-1, TCO-2と命名した。現在まで46カ月を経過しTCO-1は87代目, TCO-2は74代目と安定した増殖をしている。これらはいずれも電子顕微鏡的に微絨毛, 分泌顆粒などより腺細胞由来であることが確認された。また両株をヌードマウスにもどし移植すると, 肉眼的にTCO-1は充実部, TCO-2は嚢胞部を主体とした腫瘍を形成するが, 組織形態学的に頚部原発腫瘍ならびにヌードマウス継代移植腫瘍と類似していた。この両株を用いて13種の抗癌剤についてMTT assayによる感受性試験を行ったところ, TCO-1はmitomycin C (MMC), methotrexateに, TCO-2はMMC, etoposide, carboquoneに感受性を示した。この結果より諸種の点で腫瘍性格を異にする両株がともにMMCに対し感受性を示した。また増殖能へのestradiol, progesteroneなど6種のホルモンの増殖能への影響について検討した結果, 両株はともに増殖能に明らかな変化を示さなかった。以上より子宮頚部腺癌患者に対しMMCを含む抗癌化学療法が有効であり, 術後エストロゲン補充療法が禁忌ではないことが示唆された。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1992-04-01
著者
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