胎児出産前後の母体内分泌変動 : 分娩時間と娩出時母体血中Cortisolとの間の相関およびその臨床的意義
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
分娩時期は,比較的平穏な妊娠状態から,新しい生命を生み出して産褥期こ至る,母体にとっては一大変換期である.この時期においては,既に知られた生理的.生化学的変動もあるが,なお多くの未知のものがあると考えられる.このうち既知のものに関しても,これらが実際にどのようた臨床的意義を有するか不明のものが多い.もしもこれらが臨床上の事象と結びつくならば,それらは臨床上の指標として極めて価値あるものとなる.かかる意図における研究の一環として,本研究において,分娩前後の母体血清Cortisolの変動を観察した.(1)陣痛発来前の25.86±1.10(S.E.)μg/dlに比較して,陣痛開始による入院時には41.98±4.62μg/dlに上昇し(Pp<0,005),分娩直前にはさらに67.91±5.97μg/dl上昇する(Pp<0.001).分娩直後にはこれよりもやや上昇するが有意差はない(70.42±7.39μg/dl) 産褥第1,日の早朝には,陣痛前のものとほぼ同じになり,第2日,5日と次第に減少する.(2)胎児娩出時の血清Cortisolと分娩時間との間には統計学的に有意な高い相関が認められる(r=0.70, p<0.005).(3)陣痛中の血清Cortisolと分娩時間との間にも統計学的に有意な相関が存在する(r=0.79, p<0.005).(4)初産婦の分娩時間は経産婦のそれよりも有意に長い(夫々9.40±1.57,および5.58±1.76時間,p<0.5).これを反映して,初産婦の胎児分娩直前のけ血清Cortisolは経産婦のそれより有意に高い(夫々81.65±8.50,および58.63±4.78μg/dl,p<0.025).これらの結果は,陣痛が母体に対してストレスとして作用することを示すものであり陣痛に関する諸要素のうちの持続時間すなわち分娩時間が母体のの血清Cortisolの増加すなわちストレスに対する反応の大きさを決定する重要な因子であることを示唆する.従って分娩が還延した場合には,その管理のために副腎機能がまだ充分考慮されねばならない.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1980-03-01
著者
-
泉 陸一
富山医科薬科大学産科婦人科
-
泉 陸一
富山医科薬科大学産科婦人科学教室
-
泉 陸一
富山医科薬科大学 産婦人科
-
泉 陸一
富山医科薬科大学医学部医学科産科婦人科学教室
-
柳沼 懋
富山医科薬科大学医学部産科婦人科学教室
関連論文
- 401 消化管悪性腫瘍卵巣転移 (Kruckenberg 腫瘍) 摘除例の検討(第38回日本消化器外科学会総会)
- 3)卵巣癌 : 最近の動向 : 1. 診断(1.レクチャーシリーズ)
- 13 Bleomycin, Carboplatinの併用膣内投与法が著効した子宮頸癌の一例(子宮頸部III)(示説演題)(第32回日本臨床細胞学会秋期大会学術集会)
- 体外受精・胚移植(IVF-ET)後に子宮内外同時妊娠(双胎妊娠と間質部妊娠)を来し手術療法が奏効した1例
- 26.子宮原発AFP産生転移性肺癌の1例
- 383 ヒト子宮頸部腺癌培養細胞株(TCO株)の樹立とin vitroにおける各種抗癌剤の感受性について
- 31 ヌードマウス移植継代ヒト子宮頸部腺癌株の抗癌剤感受性について
- 36 ヒト子宮頸部腺扁平上皮癌細胞株(TCI株)の樹立と制癌剤感受性の検討
- 伝染性紅斑の胎内感染による胎児水腫
- 21.子宮内膜癌における腹腔内洗滌スミアの検討(婦人科3 : 子宮体部, 一般講演・口演, 第28回日本臨床細胞学会総会・学術集会)
- 277. 卵巣 Mature Cystic Teratomaから発生した Malignant Melanomaの1例(婦人科26 卵巣腫瘍その2, 一般講演・口演, 第26回日本臨床細胞学会学術集会)
- 33.著明な骨形成能をもつ子宮体部平滑筋肉腫の一例(第4群 子宮体部, 示説, 第22回日本臨床細胞学会秋期大会)
- 284 超音波断層法を用いた若年女性に対する卵巣腫瘍集団検診の試み
- 183. 同一投与経路によるCISPLATIN-STS rescue療法に関する研究 : 第32群 悪性腫瘍 III
- 71. いわゆるHuman tumor stem cell assayのヒト婦人***癌への応用 : 第12群 悪性腫瘍 VI (67〜71)
- 卵巣癌の化学療法 : 薬剤選択と誘発急性白血病について
- 157.腹水スミアにて診断された類皮嚢胞癌の腹腔内破裂の一例(胸腹水II, 示説, 第21回日本臨床細胞学会秋期大会)
- 漢方薬による排卵誘発 : 高アンドロゲン血症性・稀発月経性不妊症に対する効果
- 〓帯血中成長ホルモンおよびプロラクチン濃度の変動
- 210.胎児血中プロラクチン及び成長ホルモンの動態 : 第56群胎児・新生児・内分泌I
- 月経に関係したトラブルと漢方治療
- 218 同胞内再発を認めたPena-Shokeir症候群の一家系
- 148 ヒト胎盤, 卵膜における15 hydroxyprostaglandindehydrogenase (PGDH)の局在性と活性動態の研究
- 237 腟原発malignant melanomaの一例
- 子宮頸部細胞診・内膜組織診が診断に有効であった骨盤内放線菌症の1例
- 胎児出産前後の母体内分泌変動 : カテコールアミン分泌の変動
- 交通外傷にて骨盤骨折・胎児仮死を来した1例
- P-195 卵巣明細胞腺癌におけるエストロゲンおよびプロゲステロンレセプター発現の検討
- 125 超音波断層法を用いた若年女性約1万名に対する卵巣腫瘍集団検診の成績
- 悪性胚細胞腫瘍に用いられる抗癌剤の卵巣毒性に関する研究
- 25 捺印細胞のKi-67染色を用いた異種移植ヒト子宮頸部腺癌の抗癌剤効果の予測
- P-11 ヒト子宮体癌より樹立した明細胞腺癌株(TEN株)の細胞生物学的特性と各種抗癌剤に対する感受性について
- 12 子宮頸部腺癌および腺扁平上皮癌におけるHPV16,18型DNAの検出 : Nested PCR法とPCR-Dot blot hybridization法の比較
- 子宮頸癌に対する動注抗癌化学療法の早期効果判定法について
- 16 子宮頸癌組織におけるヘルペスウイルス2型(HSV-2) DNA BC24 transforming fragmentの検出
- 顆粒膜細胞腫と子宮内膜癌が合併した1症例
- P-195 ヌードおよびスキッドマウス移植ヒト子宮頸癌腫瘍に対するタキソール(BMS-181339)の効果について
- シスプラチンによる末梢神経障害について
- 子宮頚癌における骨転移例の検討
- 87 スキッドマウス移植ヒト卵巣卵黄嚢腫瘍における抗癌剤投与後の経時的組織学的変化についての検討
- 10 放射線照射後異形成(Postirradiation dysplasia)の発現におけるヒトパピローマウイルス(HPV)の関与についての研究
- 進行子宮頚癌患者における前斜角筋リンパ節生検の意義
- 鼠径ヘルニア嵌頓で発症した胃奇形腫の1例
- 卵巣がんの制癌剤感受性テスト (卵巣がんの治療をめぐる諸問題)
- 子宮腟部びらんの病理 (子宮腟部びらんの治療)
- 内視鏡--コルポスコ-プ (産婦人科の新しい診療機器) -- (診断用機器)
- Stage Iaの手術術式--初期浸潤癌のリンパ節転移の検討からみて (子宮頚部Ia期癌の取り扱い)
- 卵巣腫瘍の化学療法 (制癌剤の適応と限界(特集))
- 超音波骨量測定法による踵骨骨密度の年間変化率に及ぼす背景因子の検討
- 女性踵骨Peak bone massの形成時期と影響因子についての検討
- 超音波パルスドップラー法による妊婦骨盤内静脈血流動態に関する研究
- P-98 卵巣表層上皮の微細構造に関する研究
- E58 胎児超音波にて異常を指摘され、左鼠径ヘルニア嵌頓を伴った胃奇形腫の1例
- 女性としてのQOLを維持しうる婦人科治療を目指して
- リンゴ病ウイルス(ヒトパルボウイルス)の胎内感染と胎児水腫 (周産期におけるウイルス感染--母子感染防止の対策)
- 卵管溜膿腫による水腎症の1例 : 第316回北陸地方会
- Polycystic ovary syndrome〔邦文〕 (本邦臨床統計集--診療に必須の情報・数値--内分泌・代謝系疾患)
- 胎児出産前後の母体内分泌変動 : 分娩時間と娩出時母体血中Cortisolとの間の相関およびその臨床的意義
- 34. 培養絨毛上皮腫細胞表面の組織適合性抗原について (第3群 絨毛性腫瘍 (33〜44))
- 219.周産期における妊婦血中ProlactinのCortisolの動態と意義 : 第41群 妊娠・分娩・産褥 内分泌
- 46 抗ヒト胎盤Prostaglandin dehydrogenase抗体に関する基礎的研究
- 3)卵巣癌 : 最近の動向 : 2. 治療(1.レクチャーシリーズ)
- 診断面よりみた組織像ならびに最近の検査法について