卵巣癌における投与経路別CDDPの体内動態の検討

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卵巣癌36例に対して, CDDPを静脈内投与(iv), 腹腔内投与(ip), 動脈内投与(ia)を行い, 体内動態について検討した. 各投与法ともCDDPの1回投与量を100mg/bodyとし, ivは2時間で, ipとiaは30分間で投与した. 投与法別に, 初回100mg投与時の血中濃度(free-pt, total-pt)を経時的に測定した. 同様にip例の腹水中濃度を経時的に測定した. 初回100mg投与1週間後の卵巣腫瘍組織内濃度を各投与法別に測定し, さらに腹腔内反復投与例についても測定した. また, iv: 3例, ip: 4例及びia: 4例については, 卵巣腫瘍の充実性部分を表層, 中層, 深層に分けて組織内濃度を測定した. 1) 初回100mg/body投与では, 血中free-ptのpeak値はiv(n=5): 1.63±0.78, ip(n=8): 0.61±0.53, ia(n=8): 1.62±0.78μg/ml(S.D.)であり, 血中total-ptのpeak値はiv: 3.77±1.06, ip: 2.36±1.57, ia: 3.44±0.78μg/ml (S.D.)であつた. 血中free-ptのAUC(濃度曲線下面積)は, iv: 2.56±0.72, ip: 1.84±0.75, ia: 2.70±0.51μg・hr/ml(S.D.)であつた. 2) 100mg/body ip時の腹水中free-ptは, 注入直後平均25.3±28.1μg/ml(S.D.)で72時間後も検出される例もあり, total-ptは注入直後平均41.4±38.1μg/ml(S.D.)を示した. 3) 初回100mg投与時の卵巣腫瘍組織内濃度はiv: 0.71±0.44, ip: 1.3g±0.31, ia: 2.09±1.85μg/g (S.D.)であり, 腹腔内反復投与例では著しく高値を示す例がみられた. 卵巣組織内の層別濃度も同様の傾向を示し, 特にip例でも, 表層ばかりでなく中層, 深層にもCDDPは到達していた. 以上の結果から, 腹腔内投与時の血中free-ptのAUCは低いものの, 卵巣腫瘍組織内濃度はivより高値を示し, 大きな腫瘍塊に対しても有効である可能性が示唆された. また, これら各投与法における体内動態の特性より, 卵巣癌の各種病態に対して, 投与の選択, また併用の必要性が示唆された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1993-02-01

卵巣癌における投与経路別CDDPの体内動態の検討

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