HPV感染の認められた子宮頚部良性・異形成病変における HPV DNAと組織所見の推移ならびにEGF-R, CD-14との関連性について
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概要
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Southern blot hybridization法により子宮頚部の良性・異形成病変からHPV DNAが検出された症例についてHPV DNAの推移とその組織像を併せて検討し, さらにCD-14 (monocyte/macrophage), EGF-RとHPV DNAとの関連性についても検討した. 1) 子宮頚部良性病変(23例)におけるHPV DNAの推移は型別に関係なく, ほとんど1年後に陰性化したが, 不明型の1例のみは2年後に再陽性化し, 3年後に中等度異形成にまで進行した. 2) 1年間良性病変であった症例のCD-14はHPV DNAが検出された初診時〜3カ月後において発現頻度が高かつた. 3) 軽度異形成例におけるHPV DNAは1年後にも41%(7/17)に検出されたが, 3年間持続して検出された例は16型, 不明型の2例のみで, 組織学的には不変であった. 4) 中等度〜高度異形成より1〜1.5年後の早期に発癌したと考えられる例は26.7%(4/15)であり, HPV DNAは継続して認められた. これら4症例の特微は, (1)主なHPV型は16型, (2)平均年齢が34.8歳と退行症例の43.1歳より若い, (3)子宮頚部における異形成の占拠率が高いことであった. 5) 中等度〜高度異形成より扁平上皮化生へと退行した7例におけるHPV DNAは1年後に71.4%(5/7), 2〜3年後には全例検出されなくなり, 組織学的退行と密接に関連していた. 6) 中等度〜高度異形成におけるEGF-Rの発現は進行, 不変, 退行例において, 初診時にそれぞれ3/5例, 3/3例, 4/7例であり, 組織学的に退行するにつれて減少する傾向がみられたが, 進行, 不変および退行例に関係なく初診時陰性例は継続して陰性であった. また, これら病変におけるCD-14は退行例において進行例よりも比較的高い頻度で観察された. 以上のことより子宮頚部異形成病変におけるHPV DNA の推移は組織学的推移と関連することが示唆された. また若年者で中等度〜高度異形成を認め, HPV 16型陽性の場合には, 厳重な経過観察が必要であると考えられた. さらに, HPV DNAの推移には局所免疫能の関与が示唆されたが, EGF-Rと直接的な関連性は認められなかつた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1992-07-01
著者
-
鈴木 正明
順天堂大学病院産婦人科
-
古堅 善亮
順天堂大学産婦人科
-
鈴木 正明
浦安市川市民病院産婦人科
-
宮崎 亮一郎
順天堂大学産婦人科学教室
-
高田 道夫
順天堂大
-
高田 道夫
順天堂大学附属順天堂浦安病院産婦人科
-
山本 勉
順天堂大学医学部産科婦人科学教室
-
高田 道夫
順天堂大学
-
古堅 善亮
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター
-
古堅 善亮
順天堂大学医学部産婦人科学
-
山本 勉
順天堂大学 産婦人科
-
古堅 善亮
順天堂大学医学部附属静岡病院産婦人科
-
宮崎 亮一郎
順天堂大学産婦人科
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