ヒト胎盤絨毛組織におけるCystine Aminopeptidaseの産生とそのAngiotensin IIに対する作用意義に関する研究
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概要
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cystine aminopeptidase(CAP)の胎盤における産生機序やoxytocinase以外の生理的意義についてはこれまで余り研究されていない.そこで今回,著者は胎盤絨毛組織の細胞成分を分画し,その中のCAPの局在を著者らの螢光微量測定法により再検討した.また絨毛組織培養実験により絨毛のCAPの産生に影響する因子について検討し,さらにCAPのoxytocinase以外の生理的意義についても検討し,以下の成績を得た. 1)絨毛細胞分画のCAP活性は妊娠各期ともlysosome分画に有意(p<0.05)に高かつた.また加藤の方法により分離したよりpureなlysosome分画のCAP活性は著者の方法で分離したlysosome分画のCAP活性より,有意(p<0.05)に低かつた. 2)絨毛の組織培養実験で培養液中のCAP活性は30分後より有意(p<0.05)に上昇し,60分後(p<0.01)にピークを示し,以後減少する傾向を認めた. 3)絨毛組織培養においてangiotensinIIを添加するとCAP活性は,30分後まで一時的に上昇を認めるが,その後60分後より有意(p<0.01)な低下を示した.またADP,PGF_<2α>の添加によつてもCAP活性は低下したが,いずれも対照に対して有意差は認められなかつた.一方sialic acid及びgalactoseを添加するとCAP活性の上昇傾向を認めたが,galactose添加30分後(p<0.01)の場合以外は有意差はなかつた. 4)lysosome分画より精製したCAPとangiotensinIIを37℃で3時間incubationした後,thin layer chromatographyを施行した結果,CAPはangiotensinIIを分解している可能性が考えられる成績を得た.さらにアミノ酸自動分析にて,angiotensinII 1μmol当り,76n mol asparatic acid,30n mol valine,49n mol isoleucine,22n mol tyrosine,53n mol phenylalanine,および54n mol arginineが部分精製CAP抽出液200μlにより分解されていることが認められた. 以上の成績より,CAPは胎盤絨毛組織のlysosomeに類似する顆粒に存在し,angiotensinase様作用を有することが示唆された.すなわち,CAPがangiotensinase様作用も有することにより,妊娠中における母体の血圧調節機序に関与する一つの要因でもあることが推定された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1985-10-01
著者
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