ハナショウブ(Iris ensata Thunb.)とカキツバタ(I.Laevigata Fisch.)の正逆交雑における種子崩壊の解明とF_1の育成について
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概要
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わが国の代表的なアイリスであり,かつ互いに交雑不和合性が極めて高いハナショウブ(I.ensata Thunb,var. ensata, 2n=24)とカキツバタ(I.laevigata Fisch., 2n=32)を供試し,両種の自家受粉後並びに正逆交雑後の種子発育を追跡調査Lて雑種種子崩壊の原因を探るとともに,胚培養による雑種植物の育成を試みた。正逆両交雑とも充実不良でかつ発芽不能の種子のみを生じたが,いずれの場合も胚乳は常に胚にさきがけて退化した。即ち,ハナショウブ×カキツバタでは受粉21日後には胚乳,ついで27日後には胚の退化が観察され,一方カキツバタ×ハナショウブでは受粉27日後に胚乳の退化が認められたが,胚は観察期問中(受粉33日後まで)退化には至らたかった。また両交雑とも珠心や珠皮だとの母六組織には何ら異常が認められたかった。さらに後述するごとく,適切な胚培養を行えばF_1、植物を獲得L得ることが明らかにたった。これらのことから,両種の正逆交雑における種子崩壊の原因は胚乳の退化にあると結論される。なお,胚の発育限度に関して正逆交雑間に差異が認められた。即ちハナショウブ×カキツバタでは器官原基の分化が全くみられなかったが,カキツバタ×ハナショウブでは葉や根の原基が分化した。この差異は胚乳の発育限度の差異に基づくものとふられる。カキツバタ×ハナショウブの交雑後約60日目の種子より胚をとり出してこれを培養し,F_1雑種(2n=28)を育成することに成功Lた。この植物について形態的特性を明らかにし,育種的意義を検討Lた。
- 日本育種学会の論文
- 1980-06-01
著者
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