水稲における誘発雄性不稔突然変異の遺伝子分析 : 人為突然変異の利用に関する育種学的研究XVI
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概要
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水稲品種ササニシキ気乾種子のニチレンイミンおよびγ線処理で得られた雌***官の正常な11の雄性不稔突然変異体について,突然変異体×原品種のF_1およびF_2後代を用いて遺伝様式を調べた.その結果,どの突然変異体も雄性不稔は劣性突然変異によるものであり,8突然変異体は1遺伝子の変異によって生じたことが明らかになった.つぎに,雄性不稔が1遺伝子支配であることが判明した8突然変異体のそれぞれを母親として,残りの7突然変異体の各々と原品種間の交雑で生じた雄性不稔遺伝子ヘテロ個体との交雑,たらびにコシヒカリ,越南77号およびトヨニシキに誘発された合計6雄性不稔突然変異体それぞれに由来する雄性不稔遺伝子ヘテロ個体との交雑を行い,得られたF_1について雄性不稔個体分離の有無を調べた.その結果,上記8突然変異体に関与する雄性不稔遺伝子のうち5個は新しい遺伝子であること,したがって前報の結果と併せ,イネには単独で雄性不稔を発現する劣性遺伝子が少なくとも11個存在することが明らかにたった.これらの遺伝子にms7〜ms7の記号を与えた.一方,雄性不稔遺伝子の多面発現効果を知るため,品種コシヒカリ,トヨニシキおよびササニシキに誘発された,互いに雄性不稔遺伝子を異にするそれぞれ2,3および5突然変異体について主要農業特性を調査した結果,いずれの突然変異体も開花期の遅延と短稈化の傾向を示したが,この傾向はコツヒカリに由来する1突然変異体(K1)でとくに著しかった.K1の雄性不稔遺伝子(ms7)は,戻交雑での利用が期待される.
- 日本育種学会の論文
- 1987-06-01
著者
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