人為突然変異の利用に関する育種学的研究 : XIII. 水稲における数種アルキル化物質の突然変異誘起効果
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概要
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高等植物において突然変異原として広く用いられている5種類のアルキル化物質, ethylenimine(EI), ethyl methanesulfonate(EMS), N-nitroso-N-ethyl urea(NEUA), N-nitroso-N-methyl urea(NMUA)およびN-nitroso-N-methyl urethane(NMUT)の実用形質に関する突然変異誘起効果を比較するため,水稲品種銀坊主の気乾種子をあらかじめ4時間浸漬したのち,これら物質の種カの濃度の溶液で浸漬処理を行い,突然変異誘起力(mutagenic effectiveness:単位処理量当りの突然変異出現率)および突然変異誘起効率(mutagenice fficiency:単位障害当りの突然変異出現率)を調べた。 処理当代の幼苗生存率,幼苗草丈および種子稔性に対する処理効果は,各突然変異原とも処理濃度の増加に伴って増大したが,これら3形質の濃度反応様式はそれぞれ突然変異原の間で明らかに異なった。幼苗草丈の低下が同程度の処理問で比較したところ,処理効果は,EIの場合は3形質いずれについても同程度であったが,EMSおよびNEUAの場合は幼苗生存率,NMUAおよびNMUTの場合は種子稔性で相対的に低かった。 処理次式における葉緑,出穂日,稈長および種子稔性に関する変異体出現率は,NMUTを除き処理量の増加とともに高くなったが,どの形質についても,最大値でみるとNEUAが最も高く,ついでEMS,EI,NMUA,NMUTの順となった。突然変異誘起力では,葉緑,出穂日,稈長いずれにおいてもNEUA>NMUA>EI>NMUT>EMSの順となり,NEUAとEMSの間には約15倍の差があった。また突然変異誘起効率では,3形質とも,処理当代に生じる障害を基準とした場合はNEUA>EI>EMS>NMUA>NMUTの順となり,エチル化物質はメチル化物質に比べ高かったが,処理次代に出現する遺伝的障害(種子不稔変異)を基準とした場合は突然変異原間に明らかな差異が認められなかった。
- 日本育種学会の論文
- 1982-03-01
著者
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