オオムギの種子および成熟胚由来カルスからの植物体再生
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概要
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オオムギの種子または成熟胚から誘導したカルスより植物体を再生する方法があれば,従来の未熟胚利用の場合に比べて周年安定して再分化個体を供給できるので,組織培養法をオオムギ育種に利用するうえで有利である.そこで種子および成熟胚由来カルスからの植物体再分化のための最適な培養条件の開発を行なった.原則としてGAMBORGらのB5培地(蔗糖2%)を基本とし,0.03%酵母抽出物および種々の濃度の2,4-Dを加えた0.8%の寒天培地に種子および成熟胚を置床して,16時間日長1,000〜2,000luxの光条件,25/20℃(昼/夜)の温度条件下で培養を行なった.得られた結果は次のとおり.(1)種子からのカルス誘導には,8μM以上の濃度の2,4-Dを必要とし,カルス成長は2,4-D濃度が高いほど大であった.カルス形成に必要な2,4-D最低濃度は品種間で差が見られなかった.一方,成熟胚からのカルス形成は3〜100μMの範囲で,2,4-D濃度が低いほど良好であった(Table2).(2)6条品種竹林茨城1号を材料として種子からの再分化を種六の培地条件で試みたが,総計2,200のカルスから再分化個体は2個体しか得られたかった.そこで,6条16品種,2条4品種を供試して,5〜100μMの2,4-Dを加えたB5培地上で種子由来のカルスを培養した結果,2品種GOlden GrainおよびHaisa 4Xの2,4-D 10μMおよび15μM区で1〜4個体の再分化が認められた(TBble4).(3)同じ品種を用いて種子から切り出した成熟胚(胚盤つき)を上記と同一組成の培地に置床した結果,1品種Golden Promiseの10および15μMの2,4-D区で再分化が見られた(Table4).(4)Go1den Promiseの種子および成熟胚を5μMの2,4-Dを含むB5培地に置床し,5週にわたって週1回ないし2回の頻度で新しい同一組成の培地に移し換えたところ,5μMの低濃度でも種子,成熟胚ともに両区で再分化が認められた(Table5,Fig.1)
- 日本育種学会の論文
- 1987-12-01
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