放射線および化学物質により誘発されたオオムギ早熟性突然変異 : I.誘発頻度と突然変異体の特性の要約
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
秋播性六条オオムギr竹林茨城1号」を原品種として,γ線,熱中性子,化学物質の処理により,十余年間に61の早熟性突然変異体を選抜した。]連の実験から,早熟性突然変異の誘発率を推定し,それにもとづいて誘発方法の効率を比較した。また,突然変異体の由来,出穂生理および遺伝様式を要約し,オオムギ早熟性突然変異の特性を総合的に考察した。61の突然変異体中,31はγ線,5は熱中性子,残り25は化学物質の処理によって得られた。実用線量(濃度)を,γ線は20KR,エチレンイミンは0.04%とすると,始原細胞当りの葉緑体変異率は,それぞれ4.0%と8.0%で,2倍の差があるのに対し,早熟性変異率はM_1穂別系統当り0.53%とO.54%,始原細胞当り0.27%と0.20%で,大差がなかった。早熟性変異率ノ葉緑体変異率の比を誘発方法問で比べると,γ線,熱中性子では化学物質より著しく高く2.6倍以上であった。早生化日数の頻度分布から突然変異系統は2〜7目の早生型と8-11目の極早生型に区別された。γ線および熱中性子照射によって得た系統の過半数は極早生型であるのに対し,化学物質による30系統のうち極早生型は7系統にすぎなかった。化学物質では葉緑体変異率に対する早熟性変異率の比が低いこと,たらびに,極早生型が少いことから,オオムギの早熟性突然変異の誘発には放射線のほうが化学物質より優ると結論した。突然変異系統は短目遅延度か低温要求度,または両者が変化Lていた。短目遅延度は出稿隈界日長のわずかな減少から,短日不感応性まで,低温要求度は秋播性程度のわずかた減少から完全春播性まで種々の段階の変化が認められた。また,短目遅延度には4個,低温要求度には3個の遺伝子が関与していた。これらのことは,突然変異の誘発が早熟性に関して同一品種に多様な遺伝変異を与えることを示す。緒言早熟性は突然変異育種における重要な育種目標の一つであり,有用突然変異としては比較的高頻度で誘発されるので,これまでにも各種作物で多くの報告がある。しかし,それらは扱った突然変異系統数が少く,また,早熟性突然変異の誘発頻度の推定や,得られた突然変異体の生理的遺伝的解析が不十分なものが多い。
- 日本育種学会の論文
- 1979-09-01
著者
関連論文
- オオムギにおける成熟胚および種子由来カルスの生長におよぼすガンマ線の効果
- オオムギの種子および成熟胚由来カルスからの植物体再生
- 突然変異利用による日本および世界の育成品種
- 第20回ガンマーフィールドシンポジウム
- オオムギにおける縞萎縮病抵抗性の突然変異
- 放射線および化学物質により誘発されたオオムギ早熟性突然変異 : I.誘発頻度と突然変異体の特性の要約
- 放射線および化学物質により誘発された雄性不稔突然変異の研究:.γ線およびエチレンイミン処理によるオオムギ不稔突然変異の誘発と選抜
- 主働遺伝子に支配される量的形質のダイアレル分析
- エピスタシスとリンケージが共に存在する場合の2純系由来集団の平均値
- 2純系由来の集団におけるエピスタシスが存在する場合の遺伝分散成分の推定
- エピスタシスが存在する場合の2純系由来の集団における分散・共分散の一般的記述方法
- エピスタシスがある場合の、2純系から由来する子孫における集団の平均値の記述方法
- 冬作物新品種の紹介 : 昭和62年農林水産省登録
- 冬作物新品種の紹介 : 昭和61年農林水産省登録
- 二条オオムギにおけるうどんこ病抵抗性突然変異の誘発利用に関する研究 : I. 抵抗性突然変異誘発におけるγ線とエチレンイミンの比較
- (80) 放射線感受性の品種間差異に関する研究 第1報 日本産大麦品種の放射線感受性の地理的分布について : 日本育種学会第29回講演会講演要旨 : 一般講演
- (60) 放射線感受性の品種間差異に関する研究(第2報)大豆における放射線感受性の品種間差異 : 日本育種学会第29回講演会講演要旨 : 一般講演
- (90) 大麦の生体照射による人為突然変異の誘発 : 1)減数分裂期前後の急照射の効果 : 日本育種学会第28回講演会講演要旨 : 一般講演
- 〔74〕大麦育種における世代促進について (II) 夏播栽培における栽植密度について : 日本育種学会第17回講演要旨 : 一般講演
- 〔73〕大麦育種における世代促進について (I) 夏播栽培における2,3の形質について : 日本育種学会第17回講演要旨 : 一般講演