オオムギにおける成熟胚および種子由来カルスの生長におよぼすガンマ線の効果
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概要
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六条オオムギの皮表裸麦各6品種を材料として、種々の線量のガンマ線を種子に照射したのち、種子またはその成熟胚(胚盤付)をGAMBORGらのB5培地を基本とし2,4-Dおよび酵母抽出物を加えた寒天培地上に植えて、カルス生長量におよぼす放射線効果を調べた。照射によるカルス生長の抑制には成熟胚由来で7.5倍、種子由来で6.6倍の著しい品種間差異が認められた(表1)。とくに裸性品種はすべて皮表品種より半減線量D_50が著しく低かった(図1a、1b)。この結果は種子照射における幼苗生長で測った放射線感受性の場合と一致していた(図2、3)。これまでの報告から、放射線による幼苗生長抑制は地上部生長点の分裂組織細胞の分裂活性が阻害されることに起因するのに対し、カルス生長抑制は胚盤細胞のカルス化の阻害によるといわれている。最近前者の放射線感受性には第1染色体上の皮裸性遺伝子(N-n)と連鎖した1対の主働遺伝子(rs)が関与していることが見いだされている。本実験の結果からこのrs遺伝子の効果は分裂組織細胞の分裂活性だけでなく、胚盤組織細胞のカルス化にも作用を及ぼしていると考えられる。つぎに皮表裸麦各1品種を用いて、種子を培地に植えて3日後のカルス形成開始期に照射してカルス成長量への効果を測った。皮表のD_50は種子照射の場合の45kRから5kR(比1/9)まで急減したのに対して、裸麦では7kRから3kR(比1/2.3)へと変化が小さかった。しかし、皮表は裸麦より抵抗性であることが依然として認められた(図4a、4b)。このことは、浸漬開始1日以上の発芽種子および幼苗の照射では皮表と裸麦の間に幼苗成長抑制で測った感受性に差異が認められないことと異なっていた。
- 日本育種学会の論文
- 1988-09-01
著者
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