Ethylene imineによるイネの突然変異誘起に関する研究 : III.浸漬種子に対するethylene imineの突然変異誘起作用
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
イネ種子(品種秋晴)のethyleneimine(EI)感受性は,水浸漬後大きく変動し,特定の変化のパターンを示した。そこでこの変化がどのような要因に支配されているかを明らかにしEIの生物学的作用性,特に突然変異誘起作用との関連を明らかにする目的で実験を行った。種子浸漬後6日間経時的にEI処理を行い,感受性の変化を調べた結果,浸漬後0(乾燥種子),36〜60,108時間目の3点で感受性が高まり,特定の周期的な変動を示すことが明らかとなった。同様な処理を行った後の処理当代不稔歩合,処理次代の突然変異率を調べた結果,浸漬後0,48,108時間目に極大に達し,種子感受性の変化と類似した変化のパターンを示した。また,不稔歩合,突然変異率の変化は浸漬後60時間目を境に浸漬前期と後期で異なり,後期に移行すると両者の低下が認められた。これらの変化の要因を探るため,種子の水浸演後,茎頂部域で最初に行われる細胞分裂の時期を調べた結果,浸漬後40時間目頃より開始され,60時間目に最も盛んになることが明らかとなった。また,Feulgen法によって細胞核染色を行い,顕微分光測光法を用いて種子の茎頂部域の細胞における核DNA合成時期を調べた結果,最初の核DNA合成は浸漬後約36時間目より開始され,48時間目から54時間目にかけて最も盛んに行われ,60時間目には終了していることが明らかとたった。以上の結果からEIに対する種子感受性,突然変異率の高まる浸漬後36時間目から60時間目は種子の最初の細胞核DNA合成期と一致することが明らかとなり,EIは種子の核DNA合成に作用することにより突然変異を誘起することが推定された。さらに核DNA合成期の処理よりも乾燥種子処理で突然変異率が高い現象に基づいて,EIのイネ種子に対する突然変異誘起作用について論議した。
- 日本育種学会の論文
- 1976-06-01
著者
関連論文
- イネ菊培養再分化当代の倍数性レベルの簡易同定法
- Glycine 属植物の種分化 : 1. Kunitz Trypsin Inhibitor様タンパク質の電気泳動的特性
- 矯性イネに特異的なタンパク質及びmRNAの検出
- オオムギ完熟胚培養におけるカルスの生長に伴うアイソザイムパターンの変化
- 緑豆(Vigna radiata (L.) Wilczek)初生葉カルスからのシュート再分化
- Pseudomonas maltophiliaとの共存培養におけるダイズ粒状カルスの誘導形式
- イネにおける矮性突然変異の形質発現 : I.優性突然変異系統,ふ系71号の稈の伸長におよぼす温度の影響
- 水稲における穂形成に関する遺伝学的研究 : I.穂密度構成要素の分析
- Ethylene imineによるイネの突然変異誘起に関する研究 : III.浸漬種子に対するethylene imineの突然変異誘起作用
- Ethylene imineによるイネの突然変異誘起に関する研究 : II.種子感受性の品種間差異の要因
- Ethylene imineによるイネの突然変異誘起に関する研究 ; I.処理条件およびイネ品種の違いによるEthylene imine感受性の差異
- 11. イネカルスにおける分化の化学調節
- イネ胚のカルス化にともなう組織、細胞の変化について
- 62 イネ種子からのカルス化組織、細胞について
- オオムギの種子および成熟胚由来カルスからの植物体再生
- イネの根におけるカルスの形成と生長のセルロース阻害剤2, 6-dichlorobenzonitrileによる促進
- イネ切断根の内鞘細胞における分化と脱分化に関する細胞学的研究
- イネ種子からのカルス形成に関する組織学的研究
- イネ種子の発芽過程と突然変異誘起剤の効果について