南半球対流圏における単一ジェットと二重ジェット構造の間の交互的変動第一部カオス的遍歴

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南半球対流圏において見られる単一ジェットと二重ジェット間の交互的変動を、観測的および数値実験的に調べた。まずデータ解析を、1979年から1995年までの17年間のNCEP再解析データを用いて行った。帯状平均風からEOFを計算し、その2つの主要モードで確率密度関数(PDF)をプロットすると、単一ジェットと二重ジェットという2つの状態がそれぞれ極大となっていることが確かめられた。ただ後者は位相空間で広い領域を占めている。またピークの有意性はそれほど高くはない。さらにこれらの状態間の遷移に特別な周期はない。次に、プリミティブ方程式系にもとづく7層T15の解像度を持つ数値モデルを作成し、単一ジェットと二重ジェット間の交互的変動をシミュレートするとともに、水平拡散係数を様々に変化させることによって、その力学的根拠を追求した。標準実験での結果は、単一ジェットと二重ジェットの2つの状態がPDFにおける2つの極大となっていた。ただしここでも2つのピークはそれほど有意ではない。一方、水平拡散係数を大きくしていくと、一般的に2つのピークの有意性が増してくることがわかった。ここから標準実験の結果は、システムが安定なときには2つの有意なレジームであったものが、システムが不安定化するとともに、次第にあいまいになってきている状態としてとらえられる。さらに単一ジェットと二重ジェットという2つの状態の力学的根拠は、システムが安定なときのアトラクター、または「アトラクターの痕跡」(attractor ruin)的な領域であることもわかった。従って2つの状態間の交互的変動はカオス的遍歴の現れとして理解できる。
社団法人日本気象学会の論文
1999-04-25

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