頭頸部癌患者に対する放射線治療後のフッ化物臨床応用
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概要
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頭頸部癌に対する放射線治療は, 根治性と同時に形態や口腔機能を温存し, 生活の質を良好に保ちうる治療法である. その反面, 放射線治療後の唾液腺機能障害による口内乾燥, 嚥下障害および放射線う蝕などが多く発症することも事実である. 欧米では頭頸部領域の悪性腫瘍に対する放射線治療前, 治療中および治療後の口腔管理については配慮が行き届き, フッ化物の臨床応用が盛んに行われている. しかしながら, わが国ではこの点については依然として後進国である. 本研究は放射線治療後の頭頸部癌患者に対して, フッ化物利用が重篤な放射線う蝕の増加を抑制するか否かを検討したものである. 対象患者は1990年から1994年の間に本学附属病院に来院した頭頸部癌根治照射患者28例(上咽頭癌: 2例, 中咽頭癌: 0例, 舌癌: 6例)である. これらの患者に対して1995年から1996年の間にフッ素応用を試みた. フッ素の臨床応用には, 癌患者の精神面での負担増にならめよう最も手軽に行えるフッ素洗口法を選択した. 方法は各患者に, 正しいフッ素洗口法とブラッシングの指導を行い, 同時に回転パノラマX線撮影と口腔内診査によって4か月ごとにDMF指数およびOHI-Sを用いて効果を判定した. その結果, 28例全例のDMFT指数は, 洗口前(期間の中央値は16か月)が2.9 (18.0±8.99 から20.9±8.40, p<0.01)の上昇に対し, 洗口後4か月から1年までの上昇は0.3 (20.9±8.40から21.2±8.26, p<0・01)であった. さらにOHI-Sでは洗口前から洗口後1年までの経時変化は, 上咽頭が1.0±076から0.4±0.60, 中咽頭が0.8±0.70から0.2±0.26そして舌が1.5±1.37から0.8±0.10と顕著に下降した(p<0.001). この観察期間中にアレルギー反応を含む重篤な副作用は認められなかった. 以上のことから, 頭頸部癌根治照射後の患者に対するフッ素洗口法は放射線う蝕を予防する面で簡易かつ効果的であると考えられた.
- 1996-12-25
著者
-
清水谷 公成
大阪歯科大学歯科放射線学講座
-
菊池 優子
大阪歯科大学附属病院総合診療部
-
古跡 養之眞
大阪歯科大学歯科放射線学講座
-
古跡 養之眞
大阪歯科大学
-
古跡 養之眞
川植歯科医院
-
古跡 養之眞
大阪歯科大学 臨床研修教育科
-
菊池 優子
大阪歯科大学 臨床研修教育科
-
菊池 優子
大歯大臨床研修教育科
-
清水谷 公成
大阪歯大・歯科放射線
-
古跡 養之眞
大阪歯科大学大学院歯学研究科歯科放射線学専攻
-
清水谷 公成
大阪歯科大学放射線学教室
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