材質育種にむけてのスギ品種の年輪構造
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
三倍体を含むスギ品種を対象に,品種に特有な年輪構造に関係する形質を明らかにし,さらに特有な形質と木材の性質との関係を検討することを目的として,年輪構造の観察と縦圧縮試験とを行った.仮道管の接線壁の厚さ,壁率には品種間に大差が認められなかったが,晩材率,容積密度数,仮道管長および仮道管径は品種によって異なっている。特に,三倍体品種では,二倍体品種に比べて仮道管が長く,しかも仮道管および放射柔細胞の直径が大きく,木部細胞が巨大化する傾向がある.一方,晩材率が大きい品種ほど容積密度数が増大し,品種間の容積密度数の違いは晩材率の差異によって生じる.比重は圧縮強さおよび圧縮破壊仕事量との間に正の相関関係を持っている.晩材仮道管長は,圧縮ヤング率との間に正の相関関係があるものの,圧縮破壊ひずみおよび圧縮破壊仕事量との間に負の相関関係を示す.また,晩材ミクロフィブリル傾角は晩材仮道管長および圧縮ヤング率との間に負の相関関係を持ち,圧縮破壊ひずみおよび圧縮破壊仕事量とは正の相関関係にある.このために,圧縮ヤング率と圧縮破壊ひずみとの間,および圧縮ヤング率と圧縮破壊仕事量との間には,晩材ミクロフィブリル傾角を介してそれぞれで負の相関関係が存在している.比重,晩材仮道管長,および娩材ミクロフィブリル傾角に品種間の違いがあるとき,縦圧縮に対する力学的性質を検討した.その結果,スギ品種は,①圧縮ヤング率は高いが低い強さと小さな破壊ひずみを示すタイプ,②圧縮ヤング率は低いが高い強さと大きな破壊ひずみを示すタイプ,③これらの中間を示すタイプに大別された.Annual ring structures and compressive properties of sugi cultivars were investigated. Three trees each from five cultivars and two trees each from four other cultivars including two triploid cultivars were felled in a 25-year-old stand and a 30-year-old stand, respectively. About 10 cm thick disk was taken from the breast height of each tree stem and was dried at room temperature. Annual ring structures of the disks were examined on nine cultivars and compression tests parallel to the grain of mature wood were done on seven cultivars. Ring structures of the pieces were also analyzed after compression tests. The results obtained may be summarized as follows: 1) There were no significant differences in tangential wall thickness and cell wall percentage of tracheid among the cultivars, but latewood percentage, basic density, tracheid length and tracheid diameter depended on cultivars. Tracheid length was longer and the diameters of tracheid and ray cell were larger in the triploid cultivars than in the diploid cultivars. 2) The cultivars having high latewood percentage showed large basic density, and high correlation between latewood percentage and basic density was obtained as a whole. 3) Specific gravity was correlated positively with compressive strength and also with work to maximum load, Latewood-tracheid length was correlated positively with Young's modulus, negatively with strain at maximum load and negatively with work to maximum load. Latewood-microfibril angle was also correlated positively with strain at maximum load and with work to maximum load, and negatively with Young's modulus. Therefore negative correlations were found between Young's modulus and strain at maximum load and between Young's modulus and work to maximum load. 4) Due to the differences in specific gravity, latewood-tracheid length and latewood-microfibril angle among the cultivars, the compressive properties depended on cultivars. The examined cultivars were roughly classified into three groups on terms of the compressive properties: Type 1 has higher Young's modulus, lower compressive strength and smaller strain at maximum load, Type 2 has lower Young's modulus, higher compressive strength and larger strain at maximum load, and Type 3 has intermediate values between Type 1 and Type 2.
- 九州大学の論文
著者
関連論文
- 直方体に入射する日射の体積入射特性について
- 木材の曲げ弾性率と曲げ破壊係数への加重速さの影響
- CuAz防腐剤を定着させたスギ辺材における銅元素の微細分布
- 応力波伝播速度測定によるカラマツ生立木の非破壊腐朽診断 : 九州大学北海道演習林と信州大学野辺山ステーションにおける調査事例
- スギ樹幹における黒心材形成と灰分(第2報) : スギ3品種心材の性質
- コンポジット面で覆われた不透明太陽熱木材乾燥ハウスの特性について
- 薬用植物の生産と流通(1) : 黄柏の需給とキハダの人工植栽
- 完全パッシブ太陽熱利用木材乾燥装置の研究開発(その3) : 木材の乾燥具合と材質
- 樹木医学研究カラマツ生立木の非破壊腐朽診断-応力波測定法と打診法の比較-.
- カラマツ生立木の非破壊腐朽診断 : 応力波測定法と打診法の比較
- 完全パッシブ太陽熱利用木材乾燥装置の研究開発(その2) : 体積集熱のもとでの装置性能の熱的評価
- 完全パッシブ太陽熱利用木材乾燥装置の研究開発(その1) : 新しい概念の創出とソフト技術の構築
- 429 太陽熱利用木材乾燥装置における含水製材からの蒸発量の算出(新エネルギー(3),環境保全型エネルギー技術)
- E211 透明温室における太陽熱の体積集熱量の算出(新エネルギー)
- 全天候型太陽熱利用おが粉乾燥装置の研究開発 : 各乾燥試験におけるエネルギー収支と乾燥能力
- 完全パッシブ太陽熱利用木材乾燥装置の研究開発 : 体積集熱量の計算とエネルギー収支の実測
- 完全パッシブ太陽熱利用木材乾燥装置の研究開発 : 冬期から初夏にかけての乾燥試験結果
- 全天候型太陽熱利用おが粉乾燥装置の研究開発 : 日中及び夜間の乾燥試験結果
- 416 完全パッシブ太陽熱利用木材乾燥装置の研究開発(新エネルギー(1),環境保全型エネルギー技術)
- 418 新規概念に則った太陽熱利用木材乾燥装置の概観 : 要素技術の組み合わせと総合効果(新エネルギー(1),環境保全型エネルギー技術)
- 太陽熱利用木材乾燥装置によるカラマツ製材品の乾燥
- 太陽熱利用おが粉乾燥装置による木質ペレット用カラマツおが粉の乾燥
- グイマツ雑種F_1における未成熟材から成熟材への移行齢の遺伝的変異
- 4.森林利用部門(A.概要,I.研究教育動向)
- 樹幹内の水分通道様式について
- カラマツの容積密度数と仮道管長におよぼす間伐の影響
- キハダ内樹皮中のベルベリン含有量の変種間差異ならびに樹幹部位,伐倒時期,樹齢による変動
- 4.森林利用部門(A.部門,I.研究動向)
- 4.森林利用部門(A.部門,I.研究動向)
- 4.森林利用部門(A.部門,I.研究動向)
- ヒノキ根材と幹材における仮道管S_2層ミクロフィブリル傾角の変動 : 根材を使った幹の成熟材部ミクロフィブリル傾角の予測可能性
- スギさし木品種の成長と木材性質へ及ぼす植栽密度の影響
- 九州産スギ在来品種の成長と木材性質
- カラマツ造林木から得られた丸太の未成熟材率
- ヒノキおよびカラマツ人工造林木の木材性質のバラツキ : 一林分内のバラツキ
- スギ品種内の木材性質のバラツキ
- 材質育種にむけてのスギ品種の年輪構造
- 木材に含侵された薬剤の分布(第1報) SEM-EDXA法による元素分布のビジュアル化
- 木材の応力〜ひずみ関係の挙動をとらえる一つの考えかた : 繊維方向の荷重と関連させて
- 銅系木材保存剤の固着性に及ぼす木材組織の影響
- 材木育種にむけての材質指標としてのスギ仮道管孔口角
- 木材に含浸された薬剤の分布(第2報)スギ辺林の薬剤分布に及ぼす組織的特徴
- 環境を制御したCLSM下における収縮挙動のその場観察
- ヒノキの実生林とさし木林における木材性質の林分内変動
- 高炭素固定能を有する国産早生樹の育成と利用(第1報) : センダン (Melia azedarach) の可能性
- LV-SEM を使った脱湿に伴う細胞形状変化の観察と異方性の検討
- クスノキにおける交錯木理の形成とその意義(第1報) : 交錯木理の出現状況
- スギ辺材および移行材の比透過率に関与する木材組織構造
- カラマツ心材部の気体透過性への水中貯蔵とメタノール抽出の影響
- 針葉樹材の気体透過性におけるエタノール置換乾燥と自然乾燥後のエタノール処理の影響
- 乾燥に伴う有縁壁孔の閉鎖と気体透過性自然乾燥と凍結乾燥されたカラマツ材について
- 樹幹横断面内の気体透過性への有縁壁孔閉鎖の関与 : 自然乾燥されたスギ材とカラマツ材についての考察
- スギ樹幹における黒心材形成と灰分
- スギ心材の黒変現象-1-材色変化とその原因
- 樹種が異なる針葉樹材の力学的性質への含水率の影響-2-縦圧縮強さへの影響と年輪構造との関係
- スギ造林木の材質特性 : クモトオシとヤブクグリについて
- スギ造林木の木部形成パターンと年輪構造 : クモトオシとヤブクグリについて
- Green moisture content and basic density of 95 woody species growing in Kyushu University Forests, Japan
- ヒノキの実生林とさし木林における木材性質の林分内変動
- 供給者と利用者の出会い (林業技術問題-9-)
- 樹冠量が広葉樹の木部形成におよぼす影響(第2報)萌芽量が繊維長におよぼす影響の樹種間差異
- 曲げ強度性能と細胞壁変化へのたわみ速さの影響
- 広葉樹環孔材樹種における萌芽基部の木部形成
- 樹冠量が広葉樹の木部形成におよぼす影響-1-枝条を切除したコシアブラとヤマモモの繊維長および道管要素長
- 台風被害を受けたスギ,ヒノキ材の破壊形態と力学的性質
- 樹種が異なる針葉樹材の力学的性質への含水率の影響 : 気乾材と吸水材の圧縮に対する性質の比
- 材木育種にむけての材質指標因子としてのスギ仮道管長
- 広葉樹散孔材樹種における萌芽基部の木部形成
- スギ品種の木材性質について : 九州産の在来スギ6品種による予備実験
- 湾曲LVLを用いた枠組壁体のせん断性能の評価(第3報) : 力学的解析を用いて算出した枠組パネルのせん断性能
- 湾曲 LVL を用いた枠組壁体のせん断性能の評価(第2報)湾曲 LVL を用いたパネルと,筋かい,合板張りパネルとのせん断性能の比較
- 湾曲LVLを用いた枠組壁体のせん断性能の評価(第1報)湾曲LVLおよび湾曲LVLをコーナーに用いた枠組パネルの基礎的強度性能
- スギの品種と材質
- 生長応力からみた木材の変形現象
- 木材の音波の伝播速度とヤング率について
- 地球環境保全と木材工業の持続的発展-10-地球環境保全と木材工業--その好ましき関係
- 同一林分で生育したスギ品種の心材含水率
- スギ心材の性質 : 生材含水率,温水抽出物および明度を中心に
- 構造部材を意識したスギ12品種の木材性質 : スギ材材質評価法確立を目指して
- 水中に貯蔵されたカラマツ材の空気透過性と組織・構造
- カラマツ材の組織・構造と電気伝導
- 構造部材としての適応を指向させる木材材質 : とくにスギ品種を中心に(木質材料小特集)
- 同一林分で生育したスギ品種内の木材性質のバラツキ
- 広葉樹材の比重および組織・構造が電気伝導に与える影響
- 広葉樹材の組織・構造と空気透過性
- 木材の電気伝導と電場依存性に関する研究
- 木材材質とその意義--林業と木材工業の接点を求めて
- 高炭素固定能を有する国産早生樹の育成と利用(第2報) : チャンチンモドキ (Choerospondias axillaris) の可能性
- 林業経営情報としてのスギ樹幹ヤング係数の利用
- 変革時代の林業への期待(国民経済と森林・林業(II))
- 23 供給者と利用者の出会い(林業技術問題(IX))