直腸癌に対する肛門括約筋温存手術々式とその機能的予後 (<特集>第16回日消外総会シンポ2 括約筋温存手術術式とその機能的予後)

概要

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直腸癌に対するMiles手術は,その根治性において優れた術式であり,直腸癌といえばほとんど選択の余地なくこの術式が施行された時代が永く続いた.しかし,診断技術の進歩,平均余命の延長などの要因によって直腸癌の手術成績が向上し,術後に社会復帰する人口が増加するとともに, Miles手術に代って低位前方切除術や貫通手術など肛門括約筋温存術式が選択される直腸癌症例が多くなってきた.このさい,第1に留意すべきことは,機能保存のために癌に対する根治性を失ってはならないことで,術式の適応と症例の選択には慎重な配慮が必要である.幸い,私たちの教室例では肛門括約筋温存術式による直腸癌の治療成績はむしろMiles手術よりも良好で,症例の選択が適当であったことを裏づけているが,この術式によって期待通りの機能保存がえられたかどうかという第2の問題に対しては,必ずしも満足すべき成績が得られていない.そこで今回は,術後の排便機能が安定し,固定したものと見なすことのできる術後2年以上の症例を対象として,その排便機能を左右する因子について検討を加えたので,その結果を報告する.
一般社団法人日本消化器外科学会の論文
1980-12-01