頬舌的に圧平された下顎小臼歯について
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概要
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ヒトの下顎小臼歯, 特に第一小臼歯の歯冠形態がヒトの歯の中でも変異に富むものであることはかってより指摘されてきた。しかし, 下顎小臼歯の歯冠が一般的な形態変異の枠を越え, 一種の形態異常を呈することも稀に存在する。著者らは今回, 本講座所有の日本人約1,600個体の下顎歯列石膏模型の中に, 歯冠が頬舌的に圧平された下顎小臼歯の形態異常を数例見出したので, その所見を報告する。形態異常が認められたものは, 第一小臼歯4例6側, 第二小臼歯2例4側であった。これらの小臼歯の歯冠の近遠心径はすべて頬舌径を上回っていた。一般に, 下顎小臼歯の歯冠では近遠心径よりも頬舌径の方が優っており, 歯冠指数〔(頬舌径/近遠心径)×100〕は100を越えるが, 本例の歯冠指数はすべて100以下であった。このような下顎小臼歯の形態異常は, 下顎第一乳臼歯や化石人類の下顎小臼歯との類似性から一種の「先祖返り」であるとされてきた。しかし, このような形態異常をすべて「先祖返り」とみなすことには疑問が残る。下顎小臼歯は, 第一および第二小臼歯でそれぞれ傾向差はあるにしても, 退化的な要素が強い。したがって, このような形態異常は「先祖返り」にもとづくものではなく, 下顎小臼歯の歯胚の正常な形態形成の能力が安定性を失ったためにもたらされた可能性も強いと思われる。今回の報告例の半数以上において, その歯列内に先天的欠如と思われる歯の欠損や当該歯以外の歯の形態異常が認められたことからも, これらの形態異常のいくつかはむしろ下顎小臼歯の一種の「退化形態」を示唆するものと考えたい。
- 東北大学の論文
- 1991-06-29
著者
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