日本人の下顎小臼歯の形態学的研究(第2報)
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概要
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日本人若年者のおよそ400個体の下顎歯列石膏模型を用いて, 下顎小臼歯に認められる9種類の形質について調査した。その結果, 以下に述べる各形質の出現傾向が明らかとなった。(1)舌側咬頭の出現位置 : 舌側咬頭が頬舌軸の近心側に位置する傾向は第二小臼歯において高く, 遠心側に位置する傾向は第一小臼歯において高かった。(2)咬合面中心隆線の形態 : 中心隆線が分裂する傾向は頬側では第一小臼歯において高く, 舌側では第二小臼歯において高かった。第一および第二小臼歯ともに, この傾向は舌側よりも頬側において高かった。(3)咬合面中心隆線の接続様式 : 頬側および舌側の中心隆線が融合する傾向は第一小臼歯において高く, 両者が独立する傾向は第二小臼歯において高かった。(4)咬合面副隆線の出現数 : 副隆線の出現傾向は頬側では第一小臼歯において高く, 舌側では第二小臼歯において高かった。第一および第二小臼歯ともに, この傾向は舌側よりも頬側において高かった。(5)咬合面副隆線の出現位置 : 頬側では副隆線が中心隆線の遠心側に位置する傾向は第一小臼歯において高く, 近心側ないし近遠心両側に位置する傾向は第二小臼歯において高かった。舌側では歯種内における有意差は認められなかった。第二小臼歯では副隆線が遠心側に位置する傾向は舌側において高く, 近遠心両側に位置する傾向は頬側において高かったが, 第一小臼歯では頬舌側間における有意差は認められなかった。(6)咬合面辺縁隆線の形態 : 近遠心側ともに辺縁隆線が連続して走る傾向および中断される傾向は第二小臼歯において高く, 辺縁隆線が部分的ないし全体的に欠如する傾向は第一小臼歯において高かった。第一および第二小臼歯ともに辺縁隆線が連続して走る傾向は遠心側において高く, 中断される傾向および部分的ないし全体的に欠如する傾向は近心側において高かった。(7)頬側咬頭副結節の発達程度 : 副結節の出現は近遠心側ともに第二小臼歯のみに認められ, その出現と発達傾向は近心側よりも遠心側において高かった。(8)頬側咬合縁の形態 : 近遠心側ともに咬合縁が突隆する傾向は第二小臼歯において高かった。第一小臼歯では突隆の出現傾向は近心側において高く, 第二小臼歯では遠心側において高かった。(9)頬側面辺縁隆線の発達程度 : 近遠心側ともに辺縁隆線の出現とその発達傾向は第二小臼歯において高かった。第一小臼歯では辺縁隆線の出現とその発達傾向は近心側において高く, 第二小臼歯では遠心側において高かった。以上の各形質の出現傾向は, 下顎小臼歯の歯冠の遠心半の発達が近心半に比べて優っていること, 歯冠の頬側半の発達が舌側半に比べて優っていることを示すものであり, またこれらの傾向が第一小臼歯に比べ第二小臼歯においてより顕著であることを示すものであると考えられる。同一個体における各形質の左右側相関係数を歯種内で比較検定した結果, 舌側咬頭の位置, 近心および遠心咬合面辺縁隆線の形態, 近心頬側面辺縁隆線の発達程度の左右側相関係数は第一小臼歯において有意に高く, 頬側咬合面副隆線の出現数, 遠心頬側咬合縁の形態, 遠心頬側面辺縁隆線の発達程度の左右側相関係数は第二小臼歯において有意に高かった。これらの左右側相関係数が他方の小臼歯に比べ有意に高い形質の形態的安定性は, 左右側相関係数が有意に低い他方の小臼歯に比べより優っているものと考えられる。
- 東北大学の論文
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