リュウキュウマツ林の水分特性と乾燥害回避に関する研究(附属演習林)
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概要
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本研究は, リュウキュウマツ造林の技術体系を確立する一環として, 生長へ最も影響の大きい水分問題を取り上げ, リュウキュウマツ個体並びに林分の水分特性を解明し, 沖縄における森林環境, 特に水分に関連した環境が林分生長へ及ぼす影響を考察し, 乾燥害回避のための造林技術問題についていくつかの問題点を取り上げ, その実験的な結果にもとづいて論及したものである。研究の成果を要約すれば次のとおりである。1リュウキュウマツの樹種としての重要性 リュウキュウマツは, 日本のなかで亜熱帯地域にのみ分布するマツであって, 同地域における主要造林樹種である。戦後の沖縄における造林面積の約62%, 全林野面積の約16%, がリュウキュウマツで占められ, さらに, リュウキュウマツを適樹種とする戦災荒廃地(未立木地)や過伐による疎悪林地が取り残されている現状から, リュウキュウマツの造林は一層拡大されることが予想される。2リュウキュウマツの生長特性1)種子の発芽適温 種子の発芽適温は, 実験結果によると20∿25℃であった。適温以上の温度では発芽率は低下し, 特に35℃では腐敗粒が増し, 発芽率は著しく低かった。適温以下の温度では発芽勢および発芽率が低下し, 特に10℃の低温では発芽勢が極めて悪くなった。2)苗木の成長経過 発芽後の稚苗の成長経過は, 地上部および地下部とも発芽後6カ月経過した頃より急速な伸長がみられた。側根の発生は地表部近くに多く, 地下10cm以下では著しく少なかった。これらのことから稚苗は, 夏季における乾燥害にかかり易いと考えられるので, 地拵えを十分になして, 種子のまきつけを早期(12月初旬まで)におこない, 施肥によって生育の促進を図るなどの必要がある。3)生長型と伸長量 幼齢林の頂芽および輪枝の伸長は, 1月より開始され3月に最も伸長量が大きく, 5月からの伸長は急に減少した。しかしながら, 7月と10月に伸長ピークが見られが, このことは新芽の伸長によるものであった。針葉の伸長は, 頂芽よりややおくれて開始されるが, 頂芽と同様に伸長ピークがみられた。幼齢林の新芽の形成回数は, 1回, 2回および3回の3つのタイプに分けられる。これらの形成回数は, 個体および環境による違いは認められず, 林齢の経過とともに大部分の個体が年1回出芽タイプに変化した。すなわち, リュウキュウマツは幼齢時は多節型であって, したがって, 生長が早くおおよそ7∿8年で単節型になるものと考えられる。4)林分現存量 6年生林分および15年生林分のha当り生重量, 乾物量および水分量を標本木調査により推定した。林分現存量は, 林分生長量の大きいプロットほど, また, 地形的にすぐれたプロットほど大きい値を示した。葉齢別着葉量からリュウキュウマツの針葉の寿命は2年と推定されるが, 地形的に劣るプロットでは落葉が早くなる結果を示した。5)根系の分布 4年生林分の根系の水平分布は, 株を中心に半径40cm以内に集中するが, 地表面に近い水平根は140cm以上に達し, 林木間の根系競合のあることが認められた。根系の垂直分布は, 地表から20cm以内に多く, 深さを増すにしたがって分布量が減少し, 80cmの深さ以上の根系分布は極めて少なかった。また, ポット苗造林木はじかまき造林木に比較して, 根系の発達の悪い結果を示した。3リュウキュウマツの水分特性1)リュウキュウマツの蒸散係数 リュウキュウマツの蒸散係数を他の2樹種と比較すると, センダンより小さく, モクマオウより大きいことが判明した。このことは, 樹種間の水利用の特性の違いによるものと考えられ, 水利用の効率はモクマオウ, リュウキュウマツおよびセンダンの順に低い結果を示した。2)苗木の蒸散量およびNWPの日変化 リュウキュウマツ2年生ポット苗木の蒸散量およびNWPの日変化は, 規制因子である気温, 飽差および放射の日変化に鋭敏に反応して変化することが認められた。3)水欠差のおこる環境条件(1)異なる水分条件下で育てた苗木の蒸散量およびNWPの日変化 苗木の乾, 潤および湿に区分して育てた苗木の蒸散量の日変化は, 乾で常に小さく, 湿および潤の順に大きい値を示した。NWPの日変化は, 乾で常に低く, 潤および湿の順に高かった。蒸散の停止した後の夜間におけるNWPは, 湿および潤で-1.5バール, 乾で-3.5バールを示した。これらの値の違いは, 水ストレスの受け方の強弱を示しているものと考えられる。(2)土壌の乾燥に伴う苗木の蒸散量, NWPおよび含水率の変化 通常に育てた苗木に対して給水を断ち自然に乾燥させると, 日数の経過に伴って蒸散量, NWPおよび針葉の含水率の低下が認められた。これらの低下現象は土壌水のpF2.7附近までは徐々に, pF2.7以上になると急激になった。したがって, リュウキュウマツが水ストレスを受けて蒸散量が低下して生長減退のはじまる土壌水分条件は, pF2.7附近であることが推定された。また, 永久萎凋点pF4.2附近でのNWPは-36バール, 針葉の含
- 1979-12-11
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