リュウキュウマツの伸長生長と木部形成(林学科)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
沖縄のような亜熱帯地域に生育している樹木の材質を認識するためには, 樹木がどのように生長しているのか知る必要があると考え, リュウキュウマツ幼令木を対象に生長の季節的経過を検討した。方法としては, 主幹のシュートと針葉の長さを1年間にわたって測定することによって, 外部形態的な生長を調べた。次に, 樹幹胸高付近から樹皮を含む木部小ブロックを1ケ月ごとに切り出し, 形成層活動と木部形成の経過を観察した。1 シュートの伸長は2月から4月にかけて急激に行われ, 5∿6月まで続いた。伸長が続いているときに始まる新芽形成の開始時期は明らかにできなかったが, 6∿7月ごろまでに芽は形成され, 新しいシュートは7月から伸び始めた。その後シュートは, 冬期では緩慢な伸び量を示すものの連続的に伸長し, 翌年の2月から再び急激に伸長した。このように, シュートの伸長生長は1年間連続的に行われ, この研究では休止期が認められなかった。なお, 針葉は3月から開き始め, 直線的にその長さを増加させたが, 7月までにはほとんど伸びきってしまった。2 形成層細胞の分裂は2月から活発になり, 2月20日には早材仮道管の形成が始まっていた。早材形成は7月まで続き, 8月から晩材が形成された。1月には形成層細胞の分裂が行われているのかどうかははっきりしなかったが, 1月21日には晩材仮道管の成熟がまだ終っていなかった。2月には再び形成層細胞の分裂が活発になり, 晩材形成が終了するとともに, 新たに早材仮道管の形成が始まっているのが認められた。したがって, 形成層細胞の分裂から始まって木部細胞への分化, 成熟と続く木部形成は, 1ケ月単位で考えると年間を通して連続的に行われたことになる。3 伸長生長と木部形成の季節的経過を関連させてみると, シュートが急激な伸長を開始する時期と形成層活動が活発になる時期はどちらも2月であった。また, 新しいシュートが伸び始める時期および針葉がほとんど伸びきった時期と晩材形成が始まる時期はほぼ一致していた。以上のように, リュウキュウマツ幼令木の伸長生長と木部形成の季節的経過を明らかにしてきたが, このような結果が成木についても言えるかどうか今後検討していく必要がある。
- 琉球大学の論文
- 1978-12-01
著者
関連論文
- 沖縄産スギ材の材質(第 3 報) : 1 年輪内の晩材形成における季節変化(林学科)
- サクラ種子の発芽と化学成分に及ぼす貯蔵条件の影響
- サクラ種子の発芽と成分に及ぼす温度の影響
- 植物染料に関する研究(第 1 報) : ヤマモモの染色性について(林学科)
- 樹冠量が異なるリュウキュウマツの木部形成と年輪構造に関する研究(林学科)
- リュウキュウマツの木部形成に関する研究(第 4 報) : 年輪幅およびその形成経過におよぼす樹冠量の影響(林学科)
- 沖縄に生育するスギ, ヒノキの伸長生長と木部形成(林学科)
- リュウキュウマツの木部形成に関する研究(第 3 報) : シュートの生長と発達(林学科)
- リユウキユウマツの木部形成に関する研究(第 2 報) : 生長輪形成の季節的経過(林学科)
- リュウキュウマツの伸長生長と木部形成(林学科)
- 台湾産スギ材の海抜高の違いによる理学的性質の差異(資料)(林学科)
- 沖縄産スギ材の材質(第 4 報) : 強度的性質(林学科)
- 沖縄産広葉樹材中の結晶と結晶細胞(林学科)
- 新里凝灰岩中の埋土古材について(資料)(林学科)
- イヌマキ古材の抗蟻性について
- 針葉型による沖縄の地スギの特性(資料)(林学科)
- 沖縄産スギ幼令木樹幹および 2 年生枝の仮道管長の変異について(林学科)
- 移入実生スギ材の年輪巾, 晩材率, 気乾比重, 仮道管長について(沖縄産スギ材の材質(第 2 報))(林学科)
- 地スギ材の年輪巾, 晩材率, 気乾比重, 仮道管長について(沖縄産スギ材の材質(第 1 報))(林学科)
- 沖縄産スギ材の材質-1,2-(創立二十周年記念)