沖縄島北部に生息するジャワマングース(Herpestes javanicus)の食性と在来種への影響
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概要
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沖縄島に移入されたジャワマングース(Herpestes javanicus)の食性と在来種への影響を把握するために,沖縄島の北部地域において捕獲した83頭のマングースの消化管内容物を分析した.餌動物の出現頻度と乾燥重量は,昆虫類(71%,88mg),爬虫類(18%,27mg)および貧毛類と軟体動物(12%,33mg)が高い値を示した.また,哺乳類,鳥類,両生類および昆虫類以外の節足動物もマングースに捕食され,マングースの餌動物は極めて多岐にわたっていた.マングースが捕食した餌動物の体重を算出すると,哺乳類,鳥類,爬虫類および昆虫類がほぼ均等の重量で消失していることが示唆された.一方,餌動物の個体数と繁殖力を考慮すると,爬虫類への影響は極めて大きいと考えられた.さらに餌動物として,固有種や絶滅のおそれが高い動物種が同定され,マングースがこれらの動物に直接影響を与えていることが明確になった.現状を放置すれば,海外の多くの島嶼で起こったマングースによる在来種の減少および絶滅が,沖縄島でも繰り返されることは明らかである.沖縄島では2002年3月までの予定で,やんぱる地域に侵入したマングースの駆除が実施されているが,やんぱる地域における駆除の完了は急務であり,これ以降の駆除事業の継続が強く望まれる.さらに駆除した地域へマングースを侵入させない方法を早急に確立する必要がある.The diet of the small Asian mongoose, Herpestes javanicus, was studied by analyzing the contents in the digestive tracts of 83 mongooses caught in the northern part of Okinawa Island. Among all taxons, insects had the highest frequency of occurrence and highest mean dry weight (71%,88mg) in the hoods; reptiles (18%,27mg), oligochaetes and mollusks (12%,33mg) were also highly represented. The analysis showed that the mongooses preyed on a wide variety of avians, mammals, amphibians and arthropods. Correcting for the body weights of individual preys suggests that the mongooses consumed avians, mammals, reptiles and insects in equal proportions. However, considering the population and reproductive capability of each of these taxons in the habitat, it can be concluded that reptiles may be the most vulnerable taxon on the island. Furthermore, it was ascertained that the mongooses preyed upon endangered, endemic native species. It is obvious that the native species that inhabited the northern part of Okinawa dwindled in population and eventually were made extinct by the mongoose. If we execute the extirpation plan immediately, it is probable that the worst scenario in the conservation of the ecosystem on Okinawa Island can be avoided.
- 2002-06-30
著者
-
織田 銑一
名古屋大学生命農学研究科
-
小倉 剛
琉球大学農学部亜熱帯動物学講座
-
佐々木 健志
琉球大学資料館
-
川島 由次
琉球大学農学部亜熱帯動物学講座
-
織田 銑一
名古屋大学環境医学研究所
-
織田 銑一
名古屋大学大学院生命農学研究科
-
織田 銑一
名古屋大学大学院生命農学研究科動物管理学研究室
-
織田 銑一
名古屋大学大学院生命農学研究科動物生産科学第一研究分野
-
小倉 剛
琉球大学農学部亜熱帯農林環境科学科
-
仲地 学
(株)南西環境研究所
-
嵩原 建二
沖縄県立博物館
-
当山 昌直
財団法人沖縄県文化振興会史料編集室
-
仲地 学
株式会社南西環境研究所
-
石橋 治
厚生労働省広島検疫所
-
石橋 治
琉球大学農学部亜熱帯動物学講座:厚生労働省門司検疫所支所
-
当山 昌直
沖縄博物館
-
当山 昌直
沖縄県立公文書館資料編集室
-
川島 由次
琉球大学農学部畜産学科
-
小倉 剛
琉球大学農学部
-
小倉 剛
Laboratory Of Subtropical Zoology Faculty Of Agriculture University Of The Ryukyus
-
Ogura Go
Laboratory Of Subtropical Zoology Faculty Of Agriculture University Of The Ryukyus
-
岩原 建二
沖縄県立博物館
-
佐々木 健志
琉球大 資料館
-
Kawashima Yoshitsugu
Institute Of Physical And Chemical Research
-
Kawashima Yoshitsugu
Department Of Veterinary Anatomy Faculty Of Veterinary Medicine Hokkaido University:(present Address
-
川島 由次
琉球大学農学部
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