島根県隠岐諸島におけるコクガンの観察と同種の日本における分布について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
コクガン Branta bernicla は, かつて我が国にかなり普通に渡来したようだが, 現在では一般に非常に稀れな鳥と考えられ (cf. AUSTIN & KURODA, 1953), 事実この種を観察したという報告は最近少ない。筆者は, 国立科学博物館が実施した北陸・山陰地域の自然史科学的総合研究の一環として行った島根県隠岐諸島の鳥類調査中に, 1984年11月9日, 島後の那久海岸近くの海上に休息していた11羽より成る1群のコクガンを観察した。これは観察例ではあるが, 同島からコクガンの最初の記録である。観察時の海上の状態や気象状況はきわめて平穏で, また11羽という数から考えても迷鳥とは思われず, 隠岐では毎年か数年おきに時々渡来する冬鳥と考えられる。 現在この種が毎年越冬しているのが明らかなのは, 北海道函館湾, 青森県陸奥湾, 宮城県仙台湾の3か所である(横田ほか, 1982;石川県七尾湾にも毎年渡来するといわれるが, 越冬数の報告はない)。このほか, 北海道根室支庁の標津および尾岱沼では毎秋通過するコクガンの群が見られる。 東北地方以南のコクガンの分布状況については, 環境庁が1970年以来毎年行っているガンカモ科の鳥類調査, 文献(主として県別の鳥類目録・単行本類)に現われた観察記録, 過去の標本記録を総括した。その結果は, 西日本におけるコクガンの記録は少ないとはいうものの, この種がかなり広範囲にわたって渡来していることが判明した。しかし, 多くの例では過去15年間に1回観察されただけで, 個体数も1∿2羽のことが多い。渡来地は, 北から南へまんべんなく分布している。したがって, 北海道経由のほかに, 朝鮮半島を経由して渡来するものもあろうが, そのはっきりした例証はつかめなかった。
- 1985-12-01
著者
関連論文
- 小笠原諸島父島におけるメグロの分布と絶滅
- 小笠原特産のメグロ (Apalopteron familiare) の生態および行動に関する観察
- 小笠原諸島父島におけるメグロの分布と絶滅
- 島根県隠岐諸島におけるコクガンの観察と同種の日本における分布について
- 西表島産のトラツグミZoothera dauma(鳥綱,ツグミ科)の新亜種および亜種Z. d. toratugumiの検討
- 皇居の鳥類相モニタリング調査(2000-2005年)
- 皇居の鳥類相(1996年4月-2000年3月)
- 紀伊半島大峰山系の亜高山帯鳥相
- 紀伊半島大峰山系の亜高山帯鳥相 (南アルプスと紀伊半島を中心とする地域の自然史科学的総合研究-2-)
- 日本産のアカハラ (Turdus chrysolaus), とくに富士山麓で繁殖する個体群について
- 五島列島の繁殖鳥類
- 福島県下で採集された三種の稀な鳥類
- 北海道で繁殖する数種の鳥類の亜種の検討
- 日本およびその周辺地域のウソの亜種
- トカラ列島の繁殖鳥類とその起源
- 北海道と本州の鳥相の比較 (津軽海峡を中心とする地域の自然史科学的総合研究-2-)
- 北海道と本州の鳥相の比較
- 東北脊梁山地の繁殖期の鳥相 (東北脊梁山地の自然史科学的総合研究-2-)
- 東北脊梁山地の繁殖期の鳥相
- 日本産のアカハラ(Turdus chrysolaus),とくに富士山麓で繁殖する個体群について〔英文〕 (富士・箱根・伊豆の自然史科学的総合研究-2-)
- 伊豆・小笠原諸島のウグイスの分類学の考察
- 鳥類から見た屋久島の生物地理的地位
- アマツバメ類の顎筋の比較解剖学的考察〔英文〕
- 琉球列島の鳥相とその起源
- 小笠原特産のメグロ (Apalopteron familiare) の生態および行動に関する観察