生活保護現業員のメンタルヘルスとその関連要因
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概要
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目的 生活保護現業員のメンタルヘルスの実態を把握し,メンタルヘルスと関連が予測される労働状況,研修講習会の参加状況,生活習慣,疾病の有無,ソーシャルサポート,自己効力感との関連を明らかにする。<br/>方法 全国の福祉事務所(1,230か所)を,設置主体,地域別に降順に並び替え,等間隔抽出法により20%,246施設を抽出し,各施設 5 人ずつ計1,230人の生活保護現業員を調査対象とする無記名自記式質問紙調査を行った。調査項目は,基本属性,労働状況,ソーシャルサポート(家族・友人,上司,同僚),研修会・講習会への参加,疾病の有無,生活習慣,生活保護現業員としての自己効力感,生活保護現業員のメンタルヘルス(GHQ28)とした。GHQ28得点を従属変数とし,区分点で GHQ 5 点以下を GHQ 低群,GHQ6 点以上を GHQ 高群として 2 群に分け,独立変数との関連を t 検定,χ2 検定または Fisher の直接確率法により確認した。<br/> 単変量分析の結果,性差が認められたことから,男女別に GHQ28得点の高群,低群の 2 群を従属変数とし,有意性が認められた変数を独立変数とする,多重ロジスティック回帰分析(変数増加法ステップワイズ尤度比)を行った。<br/>結果 有効回答数は506人,男性410人,女性96人で,GHQ 高群は66.0%,低群は34.0%とメンタルヘルス不調の者の割合が高かった。<br/> 分析の結果,生活保護現業員男女ともに,10時間以上の労働時間の者は 9 時間以下の者に比べて,また自己効力感の低い者は高い者に比べてメンタルヘルスが有意に不調であった。男性生活保護現業員では,適度な睡眠時間が取れている者,同僚および,家族・友人のサポートが得られている者,社会福祉士資格を有する者のメンタルヘルスが良好であった。女性生活保護現業員では,年齢が高くなるほどメンタルヘルスが悪化していた。また家庭訪問を最多業務としている者のメンタルヘルスが良好であった。<br/>結論 以上のことから,残業時間への配慮,サポート的なコミュニケーションや自己効力感を育む環境づくりが求められる。男性では,適度な睡眠時間の確保,女性ではワークライフバランスを意識した働き方等,性差を考慮したメンタルヘルス対策が示唆された。
著者
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鈴木 育子
山形県立保健医療大学 保健医療学部看護学科
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小林 淳子
山形大学医学部
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森鍵 祐子
山形大学医学部
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大竹 まり子
山形大学医学部
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細谷 たき子
山形大学医学部
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叶谷 由佳
横浜市立大学医学部
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赤間 由美
宮城大学看護学部看護学科
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