P8-06 炎症性腸疾患患者腸内で低下するFusicatenibacter saccharivoransによるIL-10産生誘導能についての検討
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概要
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【背景】腸内細菌が炎症性腸疾患(IBD)の発症や病態への関与を示唆する研究が近年相次いで報告されている.IBD患者ではClostridium coccoides groupが減少しているなど,特定の細菌について疫学的挙動は明らかになってきているが,各菌種がIBDの病態に与える影響については未だ不明な点が多い.今回我々は,活動期IBD患者腸内細菌叢で偏性嫌気性グラム陽性桿菌であるFusicatenibacter saccharivorans (FS)が減少していることを見いだし,FSの腸炎に対する免疫学的影響について検討した.【方法・結果】当院IBD患者と健常者の便検体を用いて16s rRNA系統解析法で腸内細菌叢を解析したところ,FSの減少を認めた.また,潰瘍性大腸炎(UC)患者において,活動期患者では寛解導入後にFSの増加を認めた.そこで,UC患者大腸手術検体の腸粘膜固有層単核球(LPMC)を各種細菌と共培養し,上清中のサイトカインを測定したところ,FSではEnterococcus faecalisと比較して有意にIL-10産生亢進を認め,FSの抗炎症効果が示唆された.FSの腸炎抑制効果を検討するため,Dextran sulface sodium腸炎マウスにFSを投与したところ,腸炎の抑制効果を認めた.【結語】IBD患者の活動期で減少しているF. saccharivoransは,大腸LPMCからのIL-10産生の誘導を介して腸炎抑制効果を示すことが示唆され,今後新規治療薬開発につながると考えられる.
- 日本臨床免疫学会の論文
著者
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金井 隆典
慶應義塾大学 医学部 消化器内科
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佐藤 俊朗
慶應義塾大学内科学炎症性腸疾患センター
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久松 理一
慶應義塾大学医学部内科学
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松岡 克善
慶應義塾大学医学部消化器内科
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三枝 慶一郎
慶應義塾大学医学部 消化器内科
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竹下 梢
慶應義塾大学医学部 消化器内科
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筋野 智久
北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター
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三上 洋平
慶應義塾大学医学部 消化器内科
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水野 慎大
慶應義塾大学医学部 消化器内科
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久松 理一
慶應義塾大学医学部 消化器内科
-
筋野 智久
北里研究所 炎症性腸疾患先進医療センター
-
久松 理一
慶應義塾大学内科学
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松岡 克善
慶應義塾大学医学部内科学 (消化器)
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