ヒト唾液に存在する受容体特異性の異なるフコース転移酵素について

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一般に, L (-) フコースは, 糖タンパクの非還元末端部に存在し, 生体内において種々の生物学的活性の発現に重要な役割を演じている。一方, 唾液の糖タンパクにも糖鎖の末端部にフコースが存在し, 口腔細菌由来のフコース分解酵素によってフコースが遊離し, プラーク内にはフコースは存在しないと言われている。遊離したL (-) フコースを唾液糖タンパク糖側鎖に転移するフコース転移酵素が, ヒト唾液中に存在することがすでに知られているが, その受容体特異性に関する報告は極めて少ない。本研究ではヒト耳下腺ならびに顎舌下腺に含まれている, 糖タンパクおよびオリゴ糖に対して受容体特異性をもつフコース転移酵素の存在について追求した。その結果, 耳下腺および顎舌下腺のフコース転移酵素は, ともにシアル酸除去フェツインと, シアル酸ガラクトース除去フェツインに対して活性を示したが, シアル酸フコース除去ブタ顎下腺ムチンにはフコースを転移しなかった。さらに人乳少糖を受容体とした場合は, 2フコシルラクトースよリラクトディフコテトラオースと考えられる生成物が, またラクト-N-テトラオースに対しては, ラクト-N-フコペンタオースIIと推定される生成物が合成されることを確認した。しかし, ラクトース, 3フコシルラクトースへのフコースの転移は認められなかった。これらの転移活性は, 受容体の種類にかかわらず耳下腺唾液の方が, 顎舌下腺唾液よりも高い活性値を示した。一方, ABO式血液型の異なる唾液における同酵素の活性には, 大きな差異はみられなかった。以上, 本研究において, ヒト耳下腺および顎舌下腺唾液には, α1→3およびα1→4フコース転移酵素の存在が明らかとなったが, α1→2フコース転移酵素の活性は確認できなかった。
有限責任中間法人日本口腔衛生学会の論文

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