赤クローバー葉の天日乾燥過程における成分変化と分離蛋白質の消化性,およびその随伴物質について
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概要
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赤クローバーほか牧草類,青刈作物を天日乾燥すると,概してたん白質の消化率が低下し,またたん白質の溶性減少,分離したたん白質の窒素含量の低下などがある.これらの原因を明らかにする目的で,本実験を行なった.赤クローバー葉を0日(凍結乾燥), 1, 3, 5, 10日間天日乾燥し,その成分変化を経時的に測定するとともに, pH 8.0ホウ酸緩衝液溶性部をゲル濾過して得られたたん白質区分と,この溶性部より分離したたん白質,また直接0.2%NaOH性60%熱エタノール溶性部より分離した全葉たん白質について,その成分を経時的に測定した.また,分離たん白質のトリプシンによる消化率と,有効性リジン含量を測定した.さらには,消化率低下の一因となっていると思われるたん白質の随伴物質の検索を行ない,これらの関連性について論議した. 1.赤クローバー葉の天日乾燥で量その水分減少は1日目に顕著におこり, 2日目までにほぼ完了するものと考えられた.全窒素は変動せず,たん白態窒素は1日で減少し,逆にアミノ態窒素は1日で増加した. 3日以降は,いずれも一定していた. pH 8.0ホウ酸緩衝液溶性窒素は1日で急激に増加したが,以降は大きな変動はなかった.また,そのたん白態窒素は3日目まで減少したが,以降一定していた.全糖,可溶性糖類,遊離の直接還元糖も1日で急激に減少し,以降,直接還元糖は若干増加の傾向にあったが大きな変動はなかった.全フェノールとコーヒー酸誘導体は天日乾燥中,経時的に減少した. pH 8.0ホウ酸緩衝液溶性部をゲル濾過して得られたたん白質区分は天日乾燥により,糖量,フェノール化合物量が増加し,特に糖の増加が著しかった. 2. pH 8.0ホウ酸緩衝液溶性部より分離したたん白質の窒素含量は概して低いが,生葉よりのものに比し,天日乾燥5, 10日のものは,いっそう低かった.糖含量は経時的に増加し,灰分も天日乾燥で増加した.たん白質の有効性リジン含量は6.0%で,天日乾燥1日で5.2%に減少した.そのトリプシンの人工消化率は, 88.1%から経時的に低下した. 0.2% NaOH性60%熱エタノール可溶部より分離したたん白質の窒素含量は, 13.2%から天日乾燥10日で10.3%に,有効性リジン含量は5.1%から3.4%に,トリプシンの人工消化率は83.7%から44.6%に著しく低下した. 3.分離したたん白質のいずれにも構成糖として,グルコース,フラクトース,ガラクトース,アラビノースが確認され,グルコースとガラクトースが多かった.フェノール化合物として,プロトカテキュン酸が同定確認された.天日乾燥0日の試料よりpH 8.0ホウ酸緩衝液で抽出し,分離したたん白質にはケルセチンも検出された.これらたん白質に随伴してくる糖類とフェノール化合物の由来について若干論議した.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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