産褥期精神身体機能の調整におけるきゅう帰調血飲の臨床効果
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概要
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万病回春(産後門)に「産後一切の気血を調理する」と記載があるきゅう帰調血飲は,従来より「産後の肥立をよくする」とされている.われわれは子宮収縮,血中ヘモグロビン濃度,乳汁分泌および産後の精神状態について,その臨床的有用性を検討した.対象は正常分娩した171例である.分娩後にきゅう帰調血飲(6.0g/day)を投与したきゅう帰調血飲群(85例)およびエルゴメトリン(0.375 mg/day)を投与したエルゴメトリン群(86例)につき,分娩後1〜6日目の子宮底長,血中ヘモグロビン濃度,体温,乳汁分泌量,および精神症状の有無につき比較した.また退院後1ヵ月までの悪露と乳汁分泌の状況,精神状態についても検討した.その結果,きゅう帰調血飲群はエルゴメトリン群に比較し子宮底長は分娩後1日目から短い傾向で経過,5日目(きゅう帰vsエルゴ:子宮底長8.9±2.4cm vs 10.5±2.7cm)に有意差が認められた(p=0.0071).血中ヘモグロビン値は,エルゴメトリン群では分娩後1日目に比べ6日目では−1.57±7.3%であったが,きゅう帰調血飲群では+4.6±7.2%であり,有意(p=0.0025)に回復していることがわかった.乳汁分泌はきゅう帰調血飲群にのみ分娩後1日目から観察され,平均分泌量は分娩後4日目からきゅう帰調血飲群がエルゴメトリン群に比較して有意に多かった(p<0.05).きゅう帰調血飲群ではエルゴメトリン群に比較し,分娩後の気分の落ち込み(きゅう帰vsエルゴ:35.0% vs 72.4%)と焦燥・不安感(きゅう帰vsエルゴ:40.0% vs 62.1%)が有意差はないが少ないことがわかった.産後1ヵ月では,有意差はないもののエルゴメトリン群ではきゅう帰調血飲群に比べ悪露が気になる例や人工乳栄養が多かった.きゅう帰調血飲群において薬剤による副作用と思われる症状の発現はなかった.今後さらに症例数を集積させ,詳細を検討する必要があるが,きゅう帰調血飲は少なくとも分娩後の心身の回復に良好な臨床的効果を有することが判明した.〔産婦の進歩54(2):80-86,2002(平成14年3月)〕
著者
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後山 尚久
大阪医科大学
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森嶌 祥子
大阪医科大学医学部産婦人科学教室
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明瀬 大輔
大阪医科大学 応用外科学講座産婦人科学教室
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鈴木 佳彦
大阪医科大学産婦人科
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西山 浩司
大阪医科大学 応用外科学講座産婦人科学教室婦人科腫瘍科
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荘園 ヘキ子
大阪医科大学 応用外科系講座産婦人科学
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植木 實
大阪医科大学
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中井 豪
大阪医科大学応用外科系講座産婦人科学
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安田 勝行
大阪医科大学応用外科学講座産婦人科学教室
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鈴木 佳彦
大阪医科大学産婦人科学教室
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佐久間 航
大阪医科大学応用外科系講座産婦人科学
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澤井 猛
澤井産婦人科医院
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大田 尚司
清和病院
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