Women’s Health Initiative（WHI）中間報告の報道による中高年女性のホルモン補充療法への意識変革 : -近畿在住中高年女性に対する多施設アンケート調査-

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米国国立衛生研究所により一般閉経女性を対象としたホルモン補充療法の大規模前向き臨床試験であるWomen’s Health Initiative（WHI）Hormone Programの一部のプロトコールが，乳癌の発生率があらかじめ設定していたリスクを超えたとの理由で，2002年7月の中間集計後にそれ以上の試験継続を中止すると発表された．この報道はわが国でも報道されたために今後のホルモン補充療法の実施に関しては，実際に診療を担当する医師と受療者となる中高年女性の本療法への認識や考え方を調査し，今後の更年期医療の方向性を考えるための情報を得る必要があると思われた．　そこで，近畿産科婦人科学会内分泌・生殖研究部会が中心となり，近畿全体での産婦人科医師および通院患者を含む中高年女性へのアンケート調査を行うことで，本報道が及ぼした影響とホルモン補充療法の捉え方，意識などを検討した．対象は近畿圏で医療を行っている産婦人科医師1,800名とその医療施設に関係する受診患者を含む中高年女性6,500名であり，まず今回は中高年女性へのアンケート成績を解析した．回収率は19.8%（1,284部：HRT current user 46.0%, past user 7.8%, non-user 46.3%）であった．HRT current userのうち48.6%がHRTを推進する意見であり，WHI報道後は38.8%に減少した（P＝0.033）ものの，みずからはHRTをやめるとする回答はわずかに4.6%であった．HRT non-userにおいては，20.5%が推進意見であったが，WHI報道後（18.0%）にこの比率の変化はみられなかった．HRT non-userは，WHI報道前は37.7%に受療希望があり，HRTを更年期障害の治療と認識している比率がもっとも高かった（31.8%）が，骨粗鬆症（17.5%），ぼけ防止（16.8%）としての治療法として考えている比率も多いことが判明した．HRTの代替療法としては，今回のWHIの臨床試験中止が決定した以外のレジメでのホルモン補充療法を希望する比率がcurrent user（32.2%）では，past user（10.0%：P＝0.00033），non-user（14.1%：P<0.0001）よりも有意に高く，ただ待機療法でよいとする意見はcurrent user（11.9%）ではpast user（23.0%：P＝0.0057），non-user（16.2%：P<0.030）に比べ有意に低かった．　以上より，日本人中高年女性はホルモン補充療法を正しく理解しており，その潜在的需要は比較的大きく，WHI報道を冷静に受け止め，HRT current userにおいてはけっしてパニック状態にならずに，レジメを変更してでも医師とよく相談しながら継続したいとする意志が多数に認められた．このことはホルモン補充療法の位置づけを再考させるものであり，更年期医療におけるエストロゲン欠乏環境に対し，今後は慎重でかつ積極的な姿勢を示すべきであると思われる．〔産婦の進歩55（1）：18-30，2003（平成15年2月）〕

Women’s Health Initiative（WHI）中間報告の報道による中高年女性のホルモン補充療法への意識変革 : -近畿在住中高年女性に対する多施設アンケート調査-

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