下垂体病変による高ゴナドトロピン血症性排卵障害の3例

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高gonadotropin値を示す排卵障害例は卵巣自体に病変があり,著明な低estrogen状態を示すことが多く,排卵誘発も困難であるとされている。われわれは排卵障害例で血中LHおよびFSHが高値を示したにもかかわらず,estrogen値は正常域にあり,その排卵障害の原因が下垂体病変によるgonadotropin分泌異常亢進にあると思われる3例を経験したので報告する。対象は25歳(症例A),34歳(症例B),36歳(症例C)の月経異常を主訴とした1例の無排卵周期症(A)と2例の第1度無月経(B,C)である。初経は12〜14歳でみられ,その後3年(A),10年(B),22年(C)で月経異常をきたした。薬剤投与前の血中LH値は117〜201mIU/ml,FSH値は113〜120mIU/mlと著明な高値を示したが,FSH/LH比は1以下であった。一方,血中estradiol(E_2)値は,症例Bは25pg/ml以下であったが,症例AとCでは65,56pg/mlの分泌が認められた。症例BもClomid[○!R]^50mg/dayの5日間投与で血中E_2値は53pg/mlに上昇した。これら3例の血中prolactin,TSH,GH,ACTH値は正常範囲内で,甲状腺および副腎機能検査も正常であった。また,plain CTおよびenhanced CTにより,3例すべてにトルコ鞍部に直径9〜11mmの腫瘍の存在が疑われた。症例Aに排卵誘発の目的でHMG150IUを9日間投与したが血中E_2値は上昇しなかったので,下垂体腫瘍の診断で経蝶形骨洞手術を行った。摘出組織の検索で下垂体過形成と診断された。術後約1カ月で血中LHおよびFSHは30mIU/ml以下に低下し,血中progesterone値は2ng/mlに上昇し,基礎体温表は2相性を示すようになった。以上から,hypergonadotropinemiaを示す排卵障害例の中には卵巣原性以外に,下垂体腫瘍よりのgonadotropin分泌異常亢進が排卵障害の原因と考えられる症例が存在することが分かった。
1987-09-01

下垂体病変による高ゴナドトロピン血症性排卵障害の3例

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