栽培ギクのB染色体の出現について
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概要
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1. 栽培ギクにおける染色体変異が生ずる機構を明らかにするため, B染色体に注目し, 各種の栽培ギク合計284品種における出現様相, ならびに一部の品種について交配実生および減数分裂におけるそれらの消長と行動を調査した.2. B染色体の出現様相 1)栽培ギクの(用途別)種類との関係; 種類により, 1.5ないし21.3%と大きく異なり, 平均10.9%の品種に出現した. 2)常染色体数とB染色体の出現頻度との関係; B染色体は正6倍体(2n=54)とその前後の2n=53,55および正8倍体(2n=72)の品種に比べて, 常染色体数の多い品種において高頻度で出現した. 3)出現様相; 大部分の品種では調査全個体の全細胞に出現したが, 一部では調査した個体, 根端組織, 細胞などの相違により存否が認められた.3. B染色体の出現数および形態 1)1品種(個体)当たり出現数; 大部分(90.3銘)は1個, やや低頻度(9.7%)で2個出現した. 2)大きさ(長さ); 常染色体の最小染色体の約1/2であった. 3)形態と染色特性; 狭窄の位置から次中部動原体型(54.6%), 中部動原体型(27.3%), 次端部動原体型(18.2%)の順で多く出現し, いずれも真正染色質的(euchromatic)であった.4. 交配実生および減数分裂におけるB染色体の消長と行動 1)他家受粉; B染色体を1ないし2個もつ3品種とそれをもたない7品種を用いて交配した結果, すべて不稔であった. さらに根端細胞にB染色体が存在しない5品種を4組合せで交配した結果, 得られた実生の一部にB染色体が見出された例を観察した. 2)自然受粉; B染色体をもつ1品種で, 自然受粉により得られた実生にはB染色体は見出されなかった. 3)自家受粉; B染色体をもつ4品種で自家受粉により得られた2個体の実生中, 1個体には雌株とまったく同じ形態のB染色体が1個残存していた. 4)減数分裂; 1個のB染色体は常に1価染色体として行動し常染色体との対合はまったく観察できなかった.5. 以上の諸事実から, 栽培ギクにおける染色体数の変異の発生に対し, B染色体が関与する場合があるが, 栽培ギクの種類, 系統, 品種などによりその程度は異なると考えられる.
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