農村婦人における貧血の予防と改善のための公衆衛生活動

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新潟県新発田市A地区(農山村,積雪地帯)に在住する婦人を対象として,血色素量を測定したところ,12g/dl未満の低血色素量を示す者が24.4%も認められた。この率は,WHOの勧告値5%をはるかに上回るものであった。ここに,A地区婦人における貧血の予防と改善のための公衆衛生活動が積極的に行なわれるべきであるというニードが生まれた。貧血の発生要因を病態生理学的な立場から検討してみると,鉄欠乏性貧血であることが示唆された。次に,貧血発生の社会医学的要因を横断研究(多変量解析法を含む)と縦断研究とから検討してみると,肥満度,鉄の摂取量,労働強度,家族構成,収入,妊娠回数の6要因がA地区婦人における貧血の発生に大きい影響をおよぼしていることが解った。以上の結果から,A地区婦人の貧血発生は,女性特有の生理的現象を背景として,農家の兼業化促進のしわよせによる労働過重と,それによる人体の栄養の需要と消耗に対して,十分な栄養補給がおよばないことによると考えられ,栄養摂取状態の改善,農村婦人の労働改善,適切なる家族計画の指導を骨子とした公衆衛生活動を,市役所保健課,保健所,医師会,県立病院,A地区住民組織が一体となって実施した。1970年におけるA地区婦人の貧血(全血比重1.050未満,血色素量12g/dl未満,ヘマトクリット値36%未満のいずれかに該当する者を貧血と判定した)の有病率は30∼40%であったが,1974年には20∼30%に減少した。これは貧血の予防と改善のための公衆衛生活動の効果であると評価された。

農村婦人における貧血の予防と改善のための公衆衛生活動

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