赤外線吸収スペクトルによるコールタール高沸点成分の二,三の分析

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従来コールタール高沸点成分は,工業的にさほど重要視されなかった事もあり,その分析法はアントラセンおよびカルバゾールの定量法がある程度で,これらの方法も別個にしかも長時間を要して定量するようになっておりかなり煩雑である.<BR>一方其他のコールタール高沸点成分は特別の分析法もなく,それらの存在を確認する事は煩雑な方法で単離して行う以外になく,またその含有量を分析する事は困難な現状である.例えばアントラセン油を放冷して得られるアントラセンケーキはコールタールより約1%の収率を以て生産されるものであるが,この含有成分としては従来アントラセン,カルバゾールおよびフェナントレン3成分とみなされ,アントラセンをクロム酸酸化によりアントラキノンとする方法または無水マレイン酸により附加物を作りその過剰のマレイン酸を滴定する方法にて,またカルバゾールをニトロソ化分解して発生NOガスを測定する方法または窒素の元素分析法にて,夫々定量した残りは,すべてフェナントレンとして取扱われている状態である.しかしフェナントレンはアントラセン油に対し相当な溶解度を持つので,従来いわれている如く40〜50%の含量を示すとは思われず,アントラセンケーキには他にアントラセン油に難溶な物質が相当量混入しているものと考えられる.そこでタール製品高度利用の見地より,この中に含有されているものを明かにするため,アントラセンケーキの赤外線吸収スペクトルを測定し,この附近の沸点で多量に存在していると思われる成分の標準純物質の赤外線吸収スペクトルと対比して定性分析を行い,更にその定量海行うと同時に,このような混合物中のアントラセンおよびカルバゾールも同時に簡単にしかも述速に定量する事を試みた.
社団法人日本分析化学会の論文

赤外線吸収スペクトルによるコールタール高沸点成分の二,三の分析

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