赤外吸収法とプロトン核磁気共鳴法の併用による原油の分類法の研究

概要

論文の詳細を見る
原油の機器分析による簡単で迅速な分類法を試みた.世界各地の原油60試料を,そのままの状態で測定した赤外吸収(IR)及びプロトン核磁気共鳴(NMR)スペクトルについて比較検討した結果,IRでは1600cm^<-1>の芳香族に基づく吸光度が,NMRでは(0.5〜2.0)ppmのアルカンのメチル及びメチレン・メチンプロトンに基づく吸収強度の比が原油ごとに異なる値を持つこと,又それらを大きさの順に並べると,両者は異なる序列を示すことを見いだした.従って,それぞれを縦軸と横軸にとって二次元的にプロットした図は,いずれか一方だけでは不分明であった原油相互の差異を明確にすることができた.分析の繰り返し精度もよい(標準偏差はIRで約2.3%,NMRで約1.2%)ので,測定条件を同一にすれば,図表上のプロットは各原油の特性値とみなしうるし,殊に国産原油と中東産原油は全く重なり合わない別々のグループを形成していることから,産出地域の大まかな推定ができる.IR,NMRスペクトルとも100mg程度の試料とわずかの時間で測定できるので,両者を組み合わせた本方法は特に試料の量や時間に制約の多い,未知試料の出処を求めるための分析のような場合の有力な手段になりうるものと考えられる.
1980-06-05