反応速度の差を利用するチタン(IV)とバナジウム(V)の同時吸光光度定量
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概要
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チタン(IV)またはバナジウム(V)を含む試料溶液にリンモリブデン酸を加えるとき生成するヘテロポリ酸(リンモリブデン酸錯体)を塩酸酸性のもとに一定時間分解反応を行なわせたのち,塩化第一スズ溶液を添加すれば反応は停止するが,その際生ずるモリブデン青による溶液の吸光度を測定することによって両金属を定量する方法について検討したところ,満足できる結果が得られ,それぞれの金属0〜100μg/50m<I>l</I>の範囲でベールの法則がなりたつことを知った.さらに両金属の同時定量を試みたところ,1<I>N</I>塩酸溶液中でチタンのヘテロポリ酸はバナジウムのそれよりもかなり速く分解することを見いだし,これを利用すれば同時定量が可能であることがわかった.すなわち両金属含有の試料溶液中でヘテロポリ酸を生成させ,10<I>N</I>塩酸を加えて1<I>N</I>塩酸溶液とし,ヘテロポリ酸の分解反応を開始させ,1分後に1%塩化第一スズ溶液を添加して反応を停止させると,溶液中に存在する両金属の合計量に相当するモリブデン青が生成,発色するから,その溶液の吸光度(A)を測定する.もし同様の操作で分解反応を20分間行なわせると,その間にリンチタノモリブデン酸のほうは完全に分解するので,この場合の吸光度(B)はチタン共存下のバナジウムの量に相当するから,これによってバナジウムの定量ができる.なお,バナジウムについては分解反応時間が20分の場合の吸光度(B)から1分の場合の吸光度(C)が求められることがわかっているので,チタンによる吸光度(A-C)が得られ,これによってチタンの定量ができる.本法をチタンおよびバナジウムの濃度がそれぞれ20〜100μg/50m<I>l</I>の合成試料溶液に適用したところ,誤差3%以内で両金属の同時定量ができた.さらに共存イオンの影響についても検討を行なった.
- 社団法人 日本分析化学会の論文
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