e抗原・抗体に関する疫学的研究 : 無症状HBsAgキャリアにおけるe抗原,抗e抗体の年齢別出現頻度と感染性に関する考察

概要

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最近,e抗原,抗e抗体の検索がHBVの感染性の指標たりうるとの報告がみられる.著者らは,115名の無症状HBsAgキャリア(明かな肝疾患のないもの)についてe抗原と抗e抗体を検索した.e抗原は1〜10歳のグループで高率に検出され(77%),加齢とともに低率となり,21歳以上の3年齢層では15%前後に固定した.これと対照的に抗e抗体は10歳以下で最も低率で(15%),年齢の進むにしたがって次第に高率となり,61歳以上で最高を示した(54%).この結果から,carrier stateの初期はすべてe抗原陽性で感染性は強いが,大部分のキャリアは加齢とともにe抗原は陰性となるか,さらに抗e抗体陽性となって感染性は減弱ないし消失していくものと推論した.なお,carrier motherがe抗原陽性であれば,きわめて高率に母児感染が成立し,また,母親がHBsAg陰性であっても,父親その他の同居者のうちにe抗原陽性キャリアが存在すれば乳・幼児がキャリアとなる危険性が意外に高いことを示唆する成績を掲げた.
社団法人日本肝臓学会の論文