羊毛のアミノ酸組成におよぼす各種アルカリ処理の影響
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概要
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羊毛をアルカリで処理したさい,処理に用いたアルカリの種類の相違がランチオニン,リジノアラニンなどの安定なクロスリンクの形成におよぼす効果,およびアミノ酸組成におよぼす影響などについて検討し,さらにそれらの結果と前報9)でえられた羊毛単繊維の機械的挙動との関係についても考察した.脱脂コリデール羊毛をアンモニア,炭酸ナトリウム,水酸化ナトリウムで処理した.処理羊毛を塩酸で加水分解し,アミノ酸自動分析装置で分析した.えられた結果の大要はつぎのとおりである.1. アンモニア処理羊毛ではシスチンの減少分がすべてランチオニンの形成に結びつかず,またリジノアラニンの形成量は極めてわずかであった.そのため,シスチンを含めた全クロスリンク量はもとの羊毛より低かった.一方クロスリンクと関わりのないアミノ酸はアンモニア処理によって影響を受けなかった.以上の結果は,単繊維の機械的挙動はアンモニア処理によってほとんど影響されないという前轍9)での結果と良く一致するものと考えた.2. 炭酸ナトリウム処理華毛では処理に用いたアルカリのうちで最もクロスリンク量が高く,リジノアラニンの形成によって,シスチンを含む全クロスリンク量はもとの羊毛より高くなった.前報9)でえられた炭酸ナトリウム処理羊毛の機械的挙動の変化は処理によって形成された安定なクロスリンクによることがわかった.3. 水酸化ナトリウム処理羊毛ではリジノアラニンの形成によって,もとの羊毛より全クロスリンク量は高くなったが,応力•ひずみ挙動は安定なクロスリンク形成を反映しなかった.一方アミノ酸組成から,セメント物質に由来するHigh Glycine-Tyrosine蛋白質の分解が考えられ,応力•ひずみ挙動の変化はこの蛋白質の分解によるものと考えられた.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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