羊毛繊維の機械的性質におよぼすアルカリ処理の影響
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概要
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羊毛繊維の機械的性質におよぼす各種アルカリ処理による影響を水,尿素,臭化リチウムなどの溶液中での羊毛単繊維の応力-ひずみ挙動,および水中での40%ひずみからの応力緩和挙動などから考察した.脱脂コリデール羊毛をアンモニア,炭酸ナトリウム,水酸化ナトリウムで処理した.処理単繊維を水,4M尿素溶液,8M臭化リチウム溶液中で,ひずみ速度250%/min.,液温20°Cの条件で応力とひずみを測定した.またひずみ速度1000%/min.,液温20°Cで水中における40%ひずみからの応力緩和を測定した.得られた結果の大要はつぎのとおりである.1. アンモニア処理単繊維の応カ-ひずみ挙動はフック,降伏,降伏後の各領域における応力が無処理単繊維に対して平行により低い応力に移動しており,応力緩和挙動は無処理繊維のそれとほぼ同じであったことから,アンモニアによる処理は繊維の構造をあまり変化させないものと考えた.2. 炭酸ナトリウム処理単繊維では降伏後領域に特徴が認められた.無処理繊維の降伏後勾配より高く,シスチン分解量1.3%のものの切断応力は無処理繊維のそれより高くなった.これはジサルファイド結合が分解される一方でランチオニン,リジノアラニンなどのより安定なクロスリンクの形成が知られていることから,マトリックスでのジサルファイドの交換反応が低下したことによると考えた.応力緩和挙動もこの事実と一致し,ジサルファイドの交換に伴う緩和量を低下した.3. 水酸化ナトリウム処理の場合には相対的に低いシスチンの分解に対してヤング率の著しい低下,降伏から降伏後への転移点におけるひずみの増加などが観察された.このことから,水酸化ナトリウムの繊維に対する作用は結晶領域であるミクロフィブリルへの攻撃が主たる作用であると考えた.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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