メラトニン処理により惹起されたミンクにおける2回の秋季換毛
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ミンクに対するメラトニン処理は秋季換毛を促進するが,毛色の劣化も引き起すとされている.そこで,ミンク秋季換毛に対する徐放性埋没剤を利用したメラトニン処理の影響を,皮膚の形態像変化とメラニン合成酵素であるチロシナーゼ活性の変化から調べた.埋没剤は2カ月で全メラトニンを放出するよう調製し,7月初旬肩部皮下に投与した.投与後,12月まで隔週で皮膚のサンプリングを行ない,組織学的変化の指標として,活性比率と下毛数を凍結切片上で測定した.また,メラニン色素合成の指標として,皮膚ホモジネートから超遠心分離により得られる粗抽出液のチロシナーゼ活性を測定した.メラトニン処理群は,活性比率,下毛数,チロシナーゼ活性のいずれもが,8月と10月の2度ピークを示し,その時期は肉眼観察による2回の秋季換毛時期と一致していた.2度の秋季換毛の1回目は投与した外因性の,2回目は内因性のメラトニンに起因するものと考えられた.従って,メラトニン処理により秋季換毛を促進し,剥皮•屠殺時期を早期化するには,埋没剤から一定期間以上,メラトニンを放出させることが必要であろう.チロシナーゼ活性の換毛に伴う変化は,メラトニン処理群,対照群共に,組織学的変化とほぼ一致していた.このことから,メラトニン処理は換毛促進にあたって,毛の生産のみならず,メラニン色素の合成も促進するものと考えられた.また,チロシナーゼは,測定した全サンプルにおいて,反応12時間目に変曲点を持つ,反応時間に依存した,二相性の活性を示した.活性は,変曲点以前の低反応相,以後の高反応相に分けられたが,初期低反応相が,その季節変化様式から生体の皮膚状況をより反映したものと考えられた.しかし,初期低反応相の積算活性値は,メラトニン処理群で対照群の75%に低下していた.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
著者
-
中村 富美男
北海道大学 農研究
-
近藤 敬治
北海道大学 農学部 皮革製造学研究室
-
福永 重治
北海道大学大学院農学研究科
-
河野 薫
大洋ミンク株式会社
-
近藤 敬治
毛衣多様性研究室
-
Kondo Keiji
Landwirtschaftliche Fakultät Hokkaido Universität
-
Kondo Keiji
Faculty Of Agriculture Hokkaido University
-
中村 富美男
北海道大学農学部
-
福永 重治
北海道大学農学部
関連論文
- 毛皮の多様性
- ウマ浅指屈筋腱の加齢性変化に関する研究
- エゾシカの毛衣に関する形態学的研究
- ニンジン,ゴボウ,シメジ,ワカメの調理加工による食物繊維の変化
- イタチ科(Mustelidae)における毛の密度と毛髄質の形態
- エゾ鹿皮の牛皮および豚皮との比較における形態学的特性
- A Scanning Electron Microscopic Study of Dermal Collagen Fibers in Growing Mink
- 牛副次生産物、特に消火器のコラーゲンに関する組織学的研究
- ミンク皮膚の季節換毛に伴う組織化学的変化
- ミンク皮膚の季節換毛に伴う組織化学的変化
- 休止期ミンク毛包外根鞘細胞の綿毛繋留構造
- 筋肉内コラーゲンのラットの成長に伴う変化
- ミンクの皮膚,特に毛包と真皮の成長に伴う変化
- THE PELAGE DEVELOPMENT IN YOUNG MILK(Mustela vison)
- The beauty of mink pelage observea with SEM
- メラトニン処理により惹起されたミンクにおける2回の秋季換毛
- ナチュラルミンク毛の光による変退色
- 羊毛のアミノ酸組成におよぼす各種アルカリ処理の影響
- 羊毛繊維の機械的性質におよぼすアルカリ処理の影響
- 毛皮の種類
- SEMによるミンク真皮コラーゲン像の成長および毛周期に伴う変化
- 研究所だより 北海道大学畜産資源開発講座--皮革製造学の研究の伝統を担う
- Untersuchungen über die Fabrikation von Biberlamm
- ビーバー•ラムの製造試験
- ウマ浅指屈筋腱の加齢性変化に関する研究
- The diversity of mammalian pelage
- 環境問題特集に寄せて
- ミンクの成長における真皮コラーゲン線維の走査型電子顕微鏡観察
- ビーバー・ラムの製造試験-3-キリングにおけるシスチンおよびシステインの消長
- 走査型電子顕微鏡による哺乳動物毛の毛髄形態〔英文〕
- 北海道大学農学部皮革実習工場の紹介