慢性腎不全に特異な甲状腺機能異常を合併した一女児例:——尿中甲状腺ホルモンの検討を中心に——

概要

論文の詳細を見る
　症例は4歳の時から慢性腎不全として加療されていた。12歳頃から甲状腺腫が出現し，血清のT4，free T4の軽度低下，TSHの軽度上昇，TRH負荷試験でTSHの過剰反応を示したが，123I甲状腺シンチでは逆に強いhyper uptakeの所見であった。この症例でみられた血清T4の低値，甲状腺ヨード摂取率の亢進の機構を知るために，本症例を含む慢性腎不全，血清Cr正常の腎疾患，正常対照について血中・尿中の甲状腺ホルモンの動態を検討した。　本症例を含む慢性腎不全では，尿中TSHは増加していたが，尿中T3，T4は正常または低値であった。このため，本症例の甲状腺機能異常は，尿への甲状腺ホルモンの排泄の結果ではなく，ヨードからT4への合成障害の可能性が疑われた。一方，血清Cr正常腎疾患では，血清T4，free T4の軽度の低下が認められたが，これらの症例では，尿蛋白の増加と共に尿中のT4も増加しており，T4の尿への大量排泄の結果と考えられた。　慢性腎不全の経過中に甲状腺腫や甲状腺機能異常を合併することは，よく知られている1) 2) が，その病態については不明なところが多く，未だ解明されていない。本論文は，慢性腎不全の経過中に特異な甲状腺機能異常を合併した女児例を中心に，他の腎疾患例についても血中・尿中の甲状腺ホルモンを測定し，腎疾患での甲状腺ホルモンの動態を検討した。

慢性腎不全に特異な甲状腺機能異常を合併した一女児例:——尿中甲状腺ホルモンの検討を中心に——

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク