ヒトノロウイルスの代替としてマウスノロウイルスを用いた消毒薬による不活化効果
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ヒトノロウイルス(HuNoV)は,未だ細胞培養系が確立されていないため,各種消毒薬のHuNoVに対する有効性について十分な知見が得られていない.そこで,HuNoVに形態学的にも遺伝学的にも類似し細胞培養可能なマウスノロウイルス(MNV)を用い,塩素系およびエタノール系消毒薬の不活化効果をTissue Culture Infectious Dose 50% (TCID50)法を指標に評価した.次亜塩素酸ナトリウムおよびジクロルイソシアヌル酸ナトリウム(塩素系消毒薬)は,200 ppm, 30秒間の接触でMNVは99.998% (4.8 log10)以上不活化して検出限界以下となり,125 ppmの場合でも30秒間で99.99% (4 log10)以上の不活化が認められた.70 v/v%エタノール,0.18 w/v%クロルヘキシジングルコン酸塩含有72 v/v%エタノールおよび0.18 w/v%ベンザルコニウム塩化物含有75 v/v%エタノールは,30秒間の接触で検出限界以下までウイルス感染価を低下させた. 本研究で対象とした2種類の塩素系消毒薬は,いずれも終濃度125 ppmで高いMNV不活化効果を示した.また,3種類のエタノール系消毒薬については,エタノール濃度70 v/v%以上で使用すれば,いずれも短時間でMNVの不活化が達成できることが分かった.以上の結果から,これらの市販の消毒薬はHuNoVに対しても高い不活化効果を有することが期待され,ノロウイルス感染症の発生制御および拡大防止の感染対策を目的とした環境用消毒薬として有用であると考えられる.
著者
-
清水 優子
藍野大学藍野健康科学センター
-
牛島 廣治
藍野大学藍野健康科学センター
-
北島 正章
東京大学大学院工学系研究科
-
片山 浩之
東京大学大学院工学系研究科
-
遠矢 幸伸
日本大学生物資源科学部獣医学科
関連論文
- はじめに
- アデノウイルス分離におけるA549細胞の有用性 ; HEp-2, RDとの比較
- 水中病原微生物の検出技術とベトナム・カンボジアにおける水環境モニタリング
- 紫外線処理後の細胞内ミクロキスティンの挙動
- 新しい遺伝子増幅技術によるノロウイルスの検出方法の比較
- ヒトノロウイルスの代替としてマウスノロウイルスを用いた消毒薬による不活化効果
- 低圧・中圧紫外線ランプ照射によるダム湖水中の藻類の増殖抑制
- 高濃度粉末活性炭添加MF膜濾過プロセスによる細菌再増殖能及びトリハロメタン生成能の低減
- 生物濾過前処理による精密濾過膜のファウリング制御
- ロタウイルス感染症,ノロウイルス感染症 (小児の治療指針) -- (感染症)
- 下水処理場における病原ウイルスの低減効果の解明
- ロタウイルスワクチン (特集 世界標準にはるかに及ばないわが国の予防接種体制)
- ロタウイルスワクチン (特集 ワクチン--課題解決と新規品への期待) -- (新規ワクチンの開発状況と期待)
- ウイルス性腸炎 (DATAで読み解く内科疾患) -- (消化器)
- 沖縄県におけるロタウイルス胃腸炎の季節性, 頻度, 遺伝子型(2007-2008年)
- 水処理における薄膜状固定化光触媒の反応特性に関する研究
- スリランカにおける小児ノロウイルス胃腸炎の分子疫学的検討
- 予防接種制度の国際比較 (特集 プライマリ・ケアのためのよりよい外国人診療) -- (母子保健の違い)
- エンドヌクレアーゼ・センシティブ・サイト法によるEscherichia coliの紫外線不活化および光回復の評価
- 小児急性胃腸炎におけるノロウイルスのイムノクロマト法による迅速診断の評価
- ノロウイルス感染症 (新興・再興感染症(前篇))
- ロタウイルス,アデノウイルス,ノロウイルス感染症の迅速診断キット (ミニ特集 感染症迅速診断キットの進歩と課題)
- 胃腸かぜの原因とその病態
- ロタウイルス, ノロウイルス, サポウイルス
- ノロウイルス感染症の疫学と臨床像 (特集 冬のウイルス感染症) -- (冬のウイルス性消化管感染症)
- 下痢症ウイルス
- インフルエンザとノロウイルス
- 小児保健 ロタウイルスワクチンの動向
- 学術 基礎医学から ノロウイルスの診断法
- ウイルス学各論(2)
- フローサイトメトリーを用いた細菌再増殖能測定法の開発及びその適用に関する研究
- 都市沿岸海水中におけるF特異ファージおよび指標細菌の分布
- オゾン処理による下水処理水中の大腸菌群および大腸菌ファージの不活化
- 文献抄録 100Lの水道水中の多種類の腸管系微生物を対象とした限外濾過濃縮法の評価
- 文献抄録 微生物の起源追跡のための微生物学的・化学的手法の総合的解析
- 文献抄録 15度以下の水道水に存在する培養できないレジオネラ属菌の遺伝的多様性
- 文献抄録 水濃縮試料からのクリプトスポリジウム DNA直接抽出法とPCR阻害の抑制法の開発
- 文献抄録 水道原水からのクリプトスポリジウム検出におけるMethod 1623と培養PCR法の比較
- 文献抄録 ウイルス検出のための新しい手法:飲料水水質ガイドラインの見直しの必要性
- 水道におけるクリプトスポリジウム感染リスクの評価とその管理
- ヒトノロウイルスの代替としてマウスノロウイルスを用いた消毒薬による不活化効果
- 褥婦における麻疹・風疹・水痘および流行性耳下腺炎の予防接種・罹患率の状況
- 水中病原微生物の検出 古今東西
- 都市域における地下水汚染と汚染源の推定法
- 水環境および飲料水におけるノロウイルス汚染
- 陰電荷膜を用いた酸洗浄・アルカリ誘出によるウイルス濃縮法の開発
- 陰電荷膜を用いた酸洗浄・アルカリ誘出によるウイルス濃縮法の開発
- 加熱処理による母乳中のマウスノロウイルスの不活化効果
- 水道水の安全確保に関する現状と課題 (特集 基礎から学ぶ環境衛生)
- 加熱処理による母乳中のマウスノロウイルスの不活化効果
- 「水に潜む小さな難敵」 : −ウイルスと水の安全性を考える−
- 河川水からのウイルス及び原虫の同時濃縮法の開発
- 東日本大震災後の下水中病原微生物管理に向けた取り組み : 日本水環境学会 水中の健康関連微生物研究委員会 (特集 東日本大震災 : 研究者はどのように取り組んでいるか)
- 加熱処理による母乳中のマウスノロウイルスの不活化効果
- 東日本大震災後の下水中病原微生物管理に向けた取り組み
- Survey of Water Quality of the Chao Phraya River Flood in Thailand in 2011 Focusing on Flow and Status of Floodwater
- クリプトスポリジウム以降の歩み