我が国の看護学教育研究における倫理的問題 : 1999年から2003年の抄録分析を通して
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概要
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本研究の目的は,看護学教育研究における倫理的問題の動向を明らかにし,看護学教育研究遂行上の課題について考察することである。分析対象は,1999年から2003年の5年間に国内で発表された看護学教育研究抄録である。研究目的,研究方法,倫理的問題などから構成された分析フォームを用いて,総数2153件の看護学教育研究を分析した。研究倫理上の問題の有無は,(1)同意獲得の記載なし,(2)匿名性の確保不十分,(3)回収率100%の3点を基準に判断した。結果は,次の5点を明らかにした。1.看護学教育研究抄録の約半数に倫理的問題が存在する可能性があった。2.「同意獲得の記載なし」の問題のみが著しく減少し,研究者の倫理的配慮が対象者の同意獲得に偏っている可能性があった。3.授業中の学習活動を観察する,あるいは成績・レポート・実習記録をデータとした研究は,同意を獲得していない可能性が高かった。4.「匿名性の確保不十分」の問題が最も多かった。そのほとんどは対象者の所属施設名を抄録上に示し,抄録作成時に対象者の匿名性を確保していなかった。5.看護学教育研究が授業提供者である教員と授業を受けている学生という関係の中で実施される場合,学生に対して研究協力への強制力が働く可能性が高かった。The purpose of this study was to examine the ethical problems posed by research conducted on nursing education in Japan. Research abstracts concerning nursing education were collected from the 1999-2003 proceedings from five major Japanese nursing academic societies. A total of 2153 abstracts were analyzed using a format that consisted of research objective, method, ethical problems, and other considerations. Ethical problems were analyzed based on the following points: 1) the consent of participants, 2) anonymity of participants, and 3) response rate. The results of analysis clarified the points described below. 1) Possible ethical problems were raised in 45% of said research. 2) The ratio of research clearly mentioning the consent of participants increased, but no other ethical problems had decreased in scope. This suggests that researchers failed to consider other ethical problems. 3) When researchers monitored the classroom or analyzed student assignments for collecting data, there was a low probability of obtaining the consent of participants. 4) Not guaranteeing the anonymity of students was the most frequently occurring ethical problem. 5) Compelling force was likely to be applied to students when teachers asked their students to participate in the research.
- 千葉看護学会の論文
- 2005-12-30
著者
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