運動知覚における脳内の適応的な計算メカニズムに関する研究
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概要
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我々が眼球でとらえた運動情報は,脳内において主にV1やMT,MSTなどの背側経路によって処理されている.中でもV1には,視覚刺激中に含まれている特定の時空間周波数に選択性を持ったニューロンが,MTには運動の速度や方位に対して選択性を持ったニューロンが存在している.このようなV1からMTへの処理をモデル化したものとしてSimoncelliら(1998)の階層モデルがある.このモデルはV1のニューロン応答の静的な重み付け和によってMTの運動検出を実現している.しかし,Hayashiら(2010)はスリット視状況における心理実験によって,運動検出は単純な重み付けだけではなく,運動刺激毎に適応的な重み付けの構造が必要であることを示した.本研究では,Simoncelliらの階層モデルと定性的に等価なモデルを構築し,Hayashiらの心理実験と同等のシミュレーションを行った.その結果,静的な重み付けだけでは心理実験と同じような知覚特性が得られないことを確認した.そして,適応的な処理構造の提案手法として,V1の応答が含む周波数情報を基に重みを動的に生成するモデルを構築し,その運動検出特性の検証を行った.
- 2013-03-06
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