空間・形状情報の統合と視覚統計学習

概要

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我々は時間的に変化する刺激系列を受動的に観察するだけで,その中で頻出した系列を無意識に獲得できる.これは統計学習とよばれている.人の持つ統計学習能力やその特性は,言語獲得との関連から,聴覚系でよく調べられてきた.しかし,統計学習は,理論的にはリカレントな結合を持つ,比較的単純な神経回路で実現できることから,言語機能に限定した能力ではないことが示唆される.このような背景から,近年,視覚や触覚など他のモダリティでも,その統計学習能力が検証されてきた.本研究では,物体形状およびその位置が同時に変化する時系列パターンを用いて,視覚統計学習の特性を検証する心理実験を行った.視覚系では,物体形状とその位置情報は異なる経路で処理されている.本実験では,位置と形状それぞれの頻出系列の出現頻度と,その複合系列における出現頻度を統制することで,視覚統計学習が個別の経路で実現されているのか,バインディング後の時系列パターンを学習しているのかを検証した.実験の結果,位置と形状の系列に相関がある場合,バインディング後の系列情報しか獲得できないことが示された.これは,生態学的にも妥当なメカニズムであるといえる.
2012-03-07